クループ

豊田 弘邦

この記事の監修医師

豊田 弘邦

日本内科学会認定総合内科専門医

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クループ症候群(くるーぷしょうこうぐん)

この病気について

クループ症候群(急性喉頭気管気管支炎)は、のどの奥にある喉頭(こうとう)から気管にかけての粘膜がウイルス感染で腫れることで、特徴的な咳や呼吸困難を起こす病気です。おもに生後6か月〜3歳のお子さまに多くみられ、平均発症年齢は約2.5歳です。男児は女児の約2倍かかりやすいとされています。

お子さまの喉頭には「輪状軟骨(りんじょうなんこつ)」という完全なリング状の軟骨があります。この部分は軟骨が輪になっているため外側に広がることができず、粘膜が少しでも腫れると気道が大きく狭くなります。これがクループ特有の症状の原因です。

季節的には10〜11月にピークを迎え、4月ごろまで続きます。多くの場合は軽症で自然に改善しますが、救急外来を受診したお子さまの約3%が入院を必要とします。呼吸が苦しそうな場合は早めの受診が大切です。

主な症状

クループ症候群の症状は、かぜのような鼻水や軽い咳から始まり、12〜48時間のうちに以下のような特徴的な症状が現れます。

  • 犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう) — 犬の遠吠えやオットセイの鳴き声に似た「ケンケン」という独特の咳。クループで最も特徴的な症状です
  • 声がれ(嗄声) — 声がかすれたり、ガラガラになります
  • 吸気性喘鳴(きゅうきせいぜんめい) — 息を吸うときに「ヒューヒュー」という高い音がする状態です。気道の狭さを反映しています
  • 発熱 — 多くのお子さまに発熱がみられます
  • 鼻水・鼻づまり — かぜ症状を伴うことが一般的です

症状は夜間に悪化しやすいという特徴があります。救急外来の受診は夜10時〜明け方4時に集中しています。昼間は元気だったお子さまが、夜中に突然激しい咳で目を覚ますことがあります。症状は通常2〜3日でピークを迎え、1週間程度で改善します。

以下のような場合は、すぐに受診してください。夜間・休日であれば救急医療機関の受診をおすすめします。
- 息を吸うときに胸やのどがへこむ(陥没呼吸)
- 安静にしていてもヒューヒューと音がする
- 顔色が悪い、唇が青紫色になる(チアノーゼ)
- ぐったりしている、水分が取れない
- よだれが多く、飲み込めない様子がある

原因

クループ症候群の大部分はウイルス感染が原因です。

おもな原因ウイルス

クループのお子さまを対象とした研究では、8割でウイルスが検出され、その内訳は以下のとおりです。

  • パラインフルエンザウイルス(最多 30%程度) — クループの原因として最も多いウイルスです。とくに1型が秋〜冬の流行の中心となります
  • ライノウイルス(10%程度) — いわゆる「かぜ」の原因ウイルスとしても知られています
  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)(10%程度) — 近年、クループの原因として注目されています。オミクロン株ではより重症化しやすいことが報告されています
  • RSウイルス(5%程度) — 乳幼児に多い呼吸器ウイルスです
  • その他のコロナウイルス(5%程度)、インフルエンザウイルス(5%程度)、エンテロウイルス(5%程度)、ヒトメタニューモウイルス(5%程度)、アデノウイルス(1%程度)なども原因となります

なぜお子さまに多いのか

ウイルスが喉頭や気管の粘膜に感染すると、炎症によって粘膜が腫れます。お子さまの喉頭にある輪状軟骨は完全なリング構造のため、腫れても外に広がることができません。さらにお子さまは気道の直径自体が小さいため、わずかな腫れでも呼吸への影響が大きくなります。泣いたり興奮したりすると、気道内に強い陰圧が生じ、やわらかい気管の壁がさらに狭まることがあります。

成長とともに気道が広くなるため、6歳以降はクループにかかることはまれです。

かかりやすい条件

  • 生後6か月〜3歳(ピークは2歳前後)
  • 男児に多い(男女比は約2:1)
  • 秋〜冬の寒い季節(10〜11月がピーク)
  • ご両親にクループの既往がある場合、約3倍かかりやすくなります
  • 保育園・幼稚園など集団生活

検査・診断

クループ症候群の診断は、おもに症状と診察所見から行います。特徴的な犬吠様の咳と吸気性喘鳴があれば、レントゲンや血液検査なしに診断できることがほとんどです。

診察で確認すること

  • 咳の性状(犬吠様であるかどうか)
  • 呼吸の状態(喘鳴の有無、陥没呼吸の有無、呼吸数)
  • 全身状態(顔色、活気、水分摂取の状況)
  • 酸素飽和度(指先にセンサーをつけて測定します。痛みはありません)

重症度の評価(Westleyクループスコア)

クループの治療方針を決めるうえで、重症度の評価が重要です。医療現場では「Westleyクループスコア」という評価法が広く用いられており、喘鳴・陥没呼吸・空気の入り・チアノーゼ・意識状態の5項目を点数化して重症度を判定します。

重症度スコア症状の目安
軽症2点以下興奮時のみ犬吠様咳嗽、安静時の喘鳴なし、陥没呼吸は軽度またはなし
中等症3〜7点安静時にも喘鳴あり、軽度以上の陥没呼吸
重症8点以上著しい陥没呼吸、不穏やぐったり、チアノーゼの可能性

追加検査が必要な場合

多くの場合は検査なしで診断できますが、以下の場合には追加の検査を行うことがあります。

  • 頸部レントゲン — 気道の狭窄(きょうさく)を確認します。クループでは「尖塔(せんとう)サイン(ステープルサイン)」と呼ばれる声門下の先細り所見がみられることがありますが、クループのお子さまの約50%にしか認められず、重症度とも必ずしも相関しません
  • 症状が典型的でない場合や、標準的な治療に反応しない場合
  • 異物誤飲や急性喉頭蓋炎(こうとうがいえん)、細菌性気管炎など他の病気との区別が必要な場合
ウイルスの種類を特定する検査は、通常は必要ありません。ウイルスの種類が変わっても治療方針は同じだからです。ただし、インフルエンザや新型コロナウイルスが疑われる場合は、隔離や抗ウイルス薬の判断のために検査を行うことがあります。

治療

クループ症候群の治療は、気道の炎症を抑えるステロイド薬が第一選択で、重症度に応じてアドレナリン吸入を組み合わせます。

軽症の場合

  • デキサメタゾン(ステロイド薬) — 軽症であっても、デキサメタゾンの単回経口投与が推奨されます。研究では、軽症クループに1回のデキサメタゾン投与を行うことで、7日以内の再受診率が15%から7%に低下することが示されています。標準用量は0.6mg/kgの単回投与(最大12mg)です。より低い用量(0.15mg/kg)でも同等の効果があるとする研究もあります
  • 安静と水分補給 — お子さまを安心させ、こまめに水分を与えてください
  • 冷たい外気 — デキサメタゾンと併用して10℃以下の冷たい外気に30分ほど当てることで、軽症〜中等症の症状が改善したという研究結果があります。ただし、これは標準治療の代わりにはなりません

中等症〜重症の場合

安静時にも喘鳴がある場合や、呼吸が苦しそうな場合は、より積極的な治療が必要です。

  • デキサメタゾン(ステロイド薬) — 0.6mg/kgの単回経口投与を行います。のどの炎症と腫れを抑え、通常は数時間で改善がみられます。短期間の使用であれば副作用の心配はほとんどありません
  • アドレナリン吸入 — 中等症〜重症の場合に使用します。ネブライザー(吸入器)でお薬を霧状にして吸い込みます。30分以内に症状の改善が期待できます。ただし効果は一時的なため、吸入後2〜4時間は経過観察が必要です。症状が再燃する可能性があるからです
  • アドレナリン吸入への反応が不良な場合は、入院を検討します

入院が必要な場合

以下の場合は、入院での治療が必要となることがあります。連携する病院へご紹介いたします。

  • アドレナリン吸入を繰り返し必要とする場合
  • アドレナリン吸入に反応が乏しい場合
  • 酸素飽和度が低い場合
  • 水分が十分に取れない場合
  • 重症の呼吸困難がある場合
適切な治療を行えば、クループで人工呼吸器が必要になることはごくまれです。ステロイド薬の使用により、多くのお子さまは速やかに回復します。

日常生活での注意点

  • 夜間の観察を大切に — クループの症状は夜間に悪化しやすいです。お子さまの咳や呼吸の様子を注意深く観察しましょう
  • お子さまを安心させましょう — 泣いたり興奮すると気道内に陰圧が生じ、症状が悪化します。抱っこしたり、そばにいてあげることが大切です。不必要な診察や処置で泣かせることも避けたいところです
  • 水分をこまめに与えましょう — 発熱や呼吸が速いことで水分が失われやすくなります。少量ずつ、頻回に飲ませてください。母乳やミルクも普段どおりで構いません
  • 涼しい空気が効果的なことがあります — 窓を開けて冷たい外気に当てる、短時間外に出ることで症状が和らぐことがあります
  • 加湿について — 加湿した空気(スチーム)の効果については、研究では明らかな有益性も有害性も示されていません。やけどの危険があるため、熱い蒸気を直接吸わせることは避けてください
  • 喫煙は避けてください — タバコの煙は気道を刺激します。お子さまのそばでの喫煙は控えてください
  • 繰り返すクループに注意 — 年に2回以上クループを繰り返す場合は、気道の構造的な異常や胃食道逆流症、アレルギー体質などが背景にある可能性があります。耳鼻咽喉科での精密検査をおすすめすることがあります

よくあるご質問

Q. クループはうつりますか?

クループの原因となるウイルスは、咳やくしゃみによる飛沫感染で人から人へうつります。ただし、同じウイルスに感染しても、すべてのお子さまがクループを発症するわけではありません。かぜ症状だけで終わることも多いです。手洗いをこまめに行い、感染予防を心がけましょう。インフルエンザや新型コロナウイルスが原因の場合はワクチン接種も有効な予防策です。

Q. 夜中に急にケンケンという咳が始まりました。救急に行くべきですか?

犬吠様の咳があっても、お子さまが落ち着いていて、安静時に喘鳴がなく、水分が取れている場合は、翌朝の受診でも大丈夫なことが多いです。まずはお子さまを安心させ、上半身を少し起こした姿勢にしてあげてください。冷たい外気に当てると楽になることもあります。ただし、呼吸が苦しそう、胸がへこむ、顔色が悪い場合は、夜間でもすぐに救急医療機関を受診してください。

Q. クループは繰り返しますか?

はい、繰り返すことがあります。ある調査では、5〜8歳のお子さまの15.5%がクループを経験し、5%が繰り返しのクループを経験していました。喘息やアレルギー体質、胃食道逆流症との関連が指摘されています。年に2回以上繰り返す場合や、6歳以降も起こる場合は、気道の構造的な異常がないか精密検査をおすすめすることがあります。吸入ステロイド薬による予防が行われることもあります。

Q. 加湿器やスチームは効果がありますか?

加湿した空気(スチーム)の効果については、系統的レビュー(複数の研究をまとめた分析)で明らかな有益性は示されていません。一方で害もないとされています。やけどの危険があるため、熱い蒸気を直接吸わせることは避けてください。それよりも、冷たい外気に当てるほうが症状改善のエビデンスがあります。

Q. 登園・登校はいつからできますか?

クループ自体は出席停止の対象ではありません。熱が下がり、犬吠様の咳がおさまって全身状態が良ければ、登園・登校は可能です。ただし、原因ウイルスにより周囲への感染力があるため、咳が強い時期はお休みさせるのが望ましいです。判断に迷う場合はご相談ください。

当クリニックでの対応

高浜台内科小児科クリニックでは、クループ症候群の診断・治療に対応しています。

  • 診察と酸素飽和度の測定により重症度を評価し、適切な治療を行います
  • 軽症〜中等症の場合は、デキサメタゾンの処方やアドレナリン吸入治療を院内で実施できます
  • アドレナリン吸入後は院内で2〜4時間の経過観察を行い、症状の再燃がないことを確認します
  • 重症で入院が必要と判断された場合は、速やかに連携する病院へご紹介いたします
  • 繰り返すクループのお子さまには、ご自宅での対処法の指導や頓用薬の処方も行います

夜中の急な咳や呼吸困難でご心配な場合は、翌日の診療時間内にご来院ください。呼吸が苦しそうな場合は、夜間・休日の救急医療機関を受診されたうえで、後日当クリニックでのフォローアップをおすすめします。

この記事について

この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

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