肘内障(子どもが腕を動かさない・ひじが抜けた)
別名: 橈骨頭亜脱臼、nursemaid's elbow、子守の肘、輪状靭帯損傷
この記事の監修医師
中永 思蘭
日本小児科学会小児科専門医
当院での対応
- 高浜台内科小児科クリニックでは、肘内障の診断と整復治療に対応しています。
- 問診と診察により肘内障を診断し、骨折の疑いがないことを確認します
- 整復後は院内でお子さまが腕を動かす様子を確認し、問題なければすぐにご帰宅いただけます
- 整復に反応しない場合や骨折が疑われる場合は、速やかに連携する整形外科へご紹介します
- 繰り返し肘内障を起こされるお子さまには、受傷予防の指導や、ご家庭での対処法のアドバイスも行います
手を引いたあとや、転びそうになったときに腕を支えたあと、お子さまが急に片腕を使わなくなることがあります。
このような場合、肘内障(ちゅうないしょう) の可能性があります。[1]
肘内障は、小さなお子さまに多い肘のトラブルです。腫れや変形が目立たないこともありますが、骨折などとの見分けが大切です。[1][2]
ご家庭で無理に動かしたり、戻そうとしたりせず、医療機関でご相談ください。
高浜台内科小児科クリニックでは、肘内障が疑われるお子さまの診察と整復に対応しています。骨折などが疑われる場合は、連携する整形外科・医療機関へご紹介します。
肘内障でよくみられる症状
肘内障では、次のような症状がみられることがあります。[1][2]
- 急に片腕を使わなくなった
- 腕をだらんと下げている
- 手を使おうとしない
- 抱っこや着替えで腕を動かすと泣く
- じっとしていると比較的落ち着いている
- 腫れや変形は目立たないことが多い
小さなお子さまは「肘が痛い」とはっきり言えないことがあります。
そのため、急に腕を使わなくなったという様子が大切なサインになります。[1]
骨折などに注意が必要な症状
次のような症状がある場合は、肘内障だけでなく、骨折・脱臼などの可能性も考える必要があります。[1][2]
- 腕や肘が腫れている
- 腕や肘が変形している
- 強く痛がっている
- 高いところから落ちた
- 強くぶつけた
- あざや皮下出血がある
- 肩・手首・指など、肘以外も痛がる
- 指先が冷たい、色が悪い
- 整復後もしばらく腕を使わない
このような場合は、肘内障と決めつけず、早めに受診してください。
レントゲン検査などが必要と判断した場合は、連携する医療機関へご紹介します。
当院での診察と治療
当院では、まず問診と診察で、肘内障が疑われる状態か、骨折などを疑う所見がないかを確認します。
典型的な肘内障と考えられる場合は、外来で整復を行います。
整復とは、肘の靭帯のずれを戻すための短い処置です。[1][2]
処置自体は短時間で終わることが多いですが、整復の瞬間に一時的に痛がることがあります。[1]
整復の方法には複数の標準的な方法があり、お子さまの状態を確認しながら医師が判断します。[3][4]
骨折などが疑われる場合や、整復後も腕を使わない場合は、連携する整形外科・医療機関へご紹介します。
整復後の経過
整復がうまくいくと、早ければ5分ほどで腕を使い始めます。多くの場合は30分以内に、手を伸ばす・おもちゃを持つなど、自然に腕を動かす様子がみられます。
腕を自然に動かす様子が確認できれば、基本的には固定をせずに帰宅できます。
整復後は、医師から特別な指示がなければ、通常どおり生活してかまいません。入浴も可能です。
ただし、帰宅後に次のような様子がある場合は、再度ご相談ください。
- 再び腕を使わなくなった
- 痛がり方が強い
- 腫れてきた
- いつもと様子が違う
30分ほど経っても腕を使わない場合や、痛がり方が強い場合は、骨折など別の原因がないか確認が必要です。
肘内障とは
肘内障は、肘の外側にある橈骨頭という骨の周囲で、輪状靭帯という靭帯の一部がずれてしまう状態です。[1][2]
「ひじが抜けた」と表現されることもありますが、実際には大きな脱臼ではなく、橈骨頭の亜脱臼により腕を動かしにくくなっている状態です。[1][2]
1〜4歳ごろのお子さまに多く、成長とともに起こりにくくなります。[1][2]
よくあるきっかけ
肘内障は、日常の何気ない動作で起こることがあります。[1][2]
- 手をつないで歩いていて、転びそうになったため引き上げた
- 手や手首を持って抱き上げた
- 両手を持って遊んだ
- 着替えのときに腕を引っぱった
- 寝返りや遊びの中で、腕が体の下に入った
必ずしも強く引っぱった場合だけに起こるわけではありません。[1]
日常の育児場面で起こることがあるため、保護者の方がご自分を責める必要はありません。
再発と予防
肘内障は、繰り返すことがあります。[1][2]
ただし、成長とともに起こりにくくなります。[1]
再発予防のため、次の点に気をつけましょう。
- 手首を急に引っぱらない
- 抱き上げるときは脇の下を支える
- 両手を持って体を振り回す遊びは避ける
- 着替えでは腕を無理に引っぱらない
家で戻してもよいですか?
ご家庭で無理に戻そうとすることはおすすめしません。
肘内障に見えても、骨折や別のけがが隠れていることがあります。[1][2]
誤って強く動かすと痛みを悪化させる可能性もあるため、医療機関で診察を受けてください。
受診の目安
お子さまが急に腕を使わなくなった場合は、肘内障の可能性があります。[1]
一方で、腫れ・変形・強い痛み・転落や打撲がある場合は、骨折などにも注意が必要です。[1][2]
迷う場合は、早めにご相談ください。
参考文献
- ^Yamanaka S, Goldman RD (2018). "Pulled elbow in children. ". Canadian Family Physician, 64(6), 439-441.
- ^Paluch LK (2024). "Nursemaid's elbow: radial head subluxation injuries in children.". JAAPA, 37(6), 18-21. DOI
- ^Krul M, van der Wouden JC, Kruithof EJ, van Suijlekom-Smit LWA, Koes BW (2017). "Manipulative interventions for reducing pulled elbow in young children.". Cochrane Database of Systematic Reviews, 7(7).
- ^Bexkens R, Washburn FJ, Eygendaal D, van den Bekerom MPJ, Oh LS (2017). "Effectiveness of reduction maneuvers in the treatment of nursemaid's elbow: a systematic review and meta-analysis.". The American Journal of Emergency Medicine, 35(1), 159-163. DOI
よくある質問
Q整復は痛いですか?麻酔は必要ですか?
整復の瞬間は一時的に痛みを伴い、お子さまは泣くことがあります。しかし処置は数秒で終わり、整復が成功すれば5〜10分以内に痛みは消え、腕も動かせるようになります。全身麻酔や局所麻酔、鎮痛薬の事前投与は通常必要ありません。
Q受傷からどのくらいで受診すればよいですか?
受傷後、お子さまが腕を動かさなくなった時点でなるべく早めに受診してください。ただし、肘内障自体は長時間放置したとしても通常、後遺症は残りません。診療時間外であれば、翌朝の受診でも治療は可能です。ただし、腫れや変形、強い痛み、指先の色の変化などがある場合は、夜間でも救急医療機関を受診してください。
Q一度なったら、またなりますか?
はい、肘内障は再発しやすい外傷です。一度経験したお子さまの3割程度が再発すると報告されています。ただし、再発しても後遺症は残りません。5歳を過ぎれば輪状靭帯が丈夫になり、ほとんど起こらなくなります。
Q家で治してもよいですか?
基本的には医療機関を受診してください。骨折との見分けが難しい場合があり、誤って整復を試みると悪化させてしまうことがあります。ただし、何度も再発されているお子さまの場合は、診察時に保護者の方へ手技を指導することがあります。
Q整復したあと、腕を固定したほうがよいですか?
いいえ、整復がうまくいけば三角巾や包帯での固定は必要ありません。その日からお風呂も入れ、普段どおりに腕を使って構いません。むしろ自然に使わせてあげることで、きちんと治っていることが確認できます。
Q骨折との見分けはつきますか?
典型的な受傷状況(手を引っ張った)と、腕をだらりと下げた姿勢、腫れや変形がない、特定の骨を押しても痛がらない、といった所見がそろえば肘内障と診断できます。逆に、腫れ・変形・皮下出血・強い圧痛のいずれかがあれば、骨折を疑ってレントゲン検査を行います。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

