でべそ(臍ヘルニア)
別名: さいヘルニア、でべそ、umbilical hernia、臍部ヘルニア

この記事の監修医師
豊田 弘邦
日本内科学会認定総合内科専門医
臍ヘルニア(さいヘルニア/でべそ)
この病気について
臍ヘルニア(さいヘルニア)は、いわゆる「でべそ」と呼ばれる状態です。赤ちゃんはみなさん、おへそのところに小さなすき間(臍輪/さいりん)を持って生まれてきます。これはお母さんと胎児をつないでいた血管が通っていた場所で、生後しばらくの間に自然に閉じていくのが普通です。このすき間が閉じきらないうちに、腸などのお腹の中身がすき間を通って皮膚の下に押し出されてくると、おへそが膨らんで見えます。これが臍ヘルニアです。
このすき間は、ほとんどのお子さまで成長とともに自然に閉じていきます。5歳までに大多数のお子さまでおへそのすき間が閉じ、11歳までには98%のお子さまで閉鎖すると報告されています。海外では何もせず自然な経過を待つのが標準ですが、日本では治癒までの時間を短くし、皮膚のたるみを残さないことを目的に圧迫療法を行う施設も多く、当院でも実施しています。
主な症状
臍ヘルニアの代表的なサインは、おへそのところがやわらかく膨らんでいることです。
- やわらかいふくらみ — おへその真ん中が、やわらかいふくらみとして外に出ています
- 泣いたり力んだりすると大きくなる — お腹に力が入ると一時的に膨らみが大きくなり、寝ているときや力を抜いたときには小さくなります
- 押すと簡単にお腹の中に戻る — 軽く押すと、ほとんど抵抗なくお腹の中に戻ります
- 痛みはない — 触っても押してもお子さまは痛がりません
- 無症状のことがほとんど — 飲み・寝つき・機嫌に影響することは通常ありません
以下のような場合は、まれに腸がすき間にはまり込んで戻らなくなっている可能性があります(嵌頓/かんとん)。早めにご受診ください。
- 押してもふくらみがお腹の中に戻らない
- ふくらみが急に固くなった、色が赤紫や黒っぽく変わった
- お子さまが触ると痛がって泣く、機嫌が悪い
- 嘔吐をくり返す、ミルクや食事を受けつけない
原因
おへそは、胎児期にお母さんと赤ちゃんをつないでいたへその緒(臍帯)が通っていた場所です。へその緒の血管がお腹の壁を通り抜けていたため、おへそのところには小さなすき間が残された状態で生まれてきます。
生まれた後、このすき間はまわりの組織で少しずつ埋められて閉じていきます。閉じる力が弱かったり、生まれたときに大きく開いていたりすると、すき間がしばらく残り、お腹に力がかかると腸などが押し出されてふくらみになります。
おへそのすき間が閉じにくい要因として、次のようなものがあります。
- 出生時のすき間が大きい(おおむね1.5cmを超えるとき)
- おへその皮膚の余りが多い
- ダウン症候群などの体質的な背景がある場合
なお、ふくらみの「大きさ」よりも、お腹の壁のすき間の「サイズ」のほうが、自然に閉じるかどうかを左右します。
検査・診断
臍ヘルニアの診断は、視診と触診で行います。特別な画像検査は通常必要ありません。診察では次のようなことを確認します。
- ふくらみの位置・大きさ・やわらかさ
- 押したときに簡単にお腹の中に戻るか
- お腹の壁のすき間のサイズや縁の形を、皮膚の上から指で確かめる
- 痛みや赤みなど、嵌頓を疑う変化がないか
おへその「上のほう」が膨らむ場合は、臍ヘルニアではなく上臍ヘルニアという別のタイプのこともあります。こちらは自然に閉じない性質があるため、見た目が似ていても扱いが変わります。診察で区別をつけたうえで方針をご説明します。
定期的な健診のたびに、すき間のサイズが小さくなっているか、ふくらみの様子が変わっていないかを確認していきます。
治療
臍ヘルニアの治療は経過観察が基本ですが、日本では圧迫療法も広く行われており、当院でも実施しています。
経過観察
ある研究では、5歳までに約89%のお子さまで自然に閉じたと報告されています。すき間が小さくなっていく経過がみられるかぎり、健診のたびに診察で確認していきます。
圧迫療法
医療機関でやわらかい圧迫材とテープを使い、おへそを内側に押し戻したまま固定する処置です。国内の研究をまとめた解析では、圧迫療法は治癒までの時間を短くし、皮膚のたるみを残さない効果が示されています。一方、最終的に治る割合は無治療と大きく変わりません。早く始めるほど効果が出やすく、生後6か月ごろまでが目安です。テープによる皮膚のかぶれが起こることがありますが、多くは軽度です。
手術が必要になる場合
- 押しても戻らない、色が変わるなど嵌頓が疑われるとき(緊急対応)
- すき間が小さくならない大きなヘルニアのとき
- ダウン症候群などの体質的な背景があるとき
日常生活での注意点
臍ヘルニアのお子さまは、普段どおりの生活を送って問題ありません。お風呂、抱っこ、ミルク・授乳、寝かせ方、うつ伏せ遊び、衣服など、特別な制限はありません。
- 泣かせると悪くなる、ということはありません — 泣いたときに膨らむのは生理的な反応で、悪化の原因にはなりません
- 見た目が大きくても、多くは自然に閉じます — 出ているふくらみの大きさそのものより、お腹の壁のすき間が縮んでいくかどうかが大切です
- ご家庭で自己流に絆創膏で押さえるのはお控えください — 皮膚のかぶれや感染の原因になります。圧迫療法をご希望の場合は、診察でご相談ください
- 強くマッサージしたり押し込んだりしないでください — 自然に戻ったり出たりしてかまいません
- 圧迫療法をするかしないかは選べます — どちらも合理的な選択肢です。気になる場合は早めにご相談ください
- 健診で経過を確認しましょう — 乳児健診や予防接種のついでに、すき間のサイズが小さくなっているか診察でチェックできます
- 腸がすき間にはまり込む嵌頓は小児ではまれです — ただし「押しても戻らない」「色が変わる」など、いつもと違う様子のときは早めに受診してください
よくあるご質問
Q. 自然に治るのに、圧迫療法を受ける意味はありますか?
最終的に治るかどうかは、圧迫療法を行ってもしなくても大きく変わりません。利点は、治癒までの時間を短くすることと、皮膚のたるみが残りにくくなることです。整容を気にされるご家族にとって選択肢になります。
Q. 自宅で絆創膏を貼って押さえてもよいですか?
ご自宅で自己流に貼ることはおすすめできません。皮膚のかぶれや感染の原因になります。圧迫療法をご希望の場合は、診察でご相談ください。
Q. 圧迫療法はいつ始めれば効果がありますか?
早く始めるほど効果が出やすいと報告されています。一般には生後数か月以内、おおむね6か月ごろまでが目安です。
Q. 手術はいつ・どんなことをしますか?
国内では1歳半から2歳ごろを目安に、自然閉鎖が見込みにくい場合や大きなヘルニアで手術を検討します。手術は小児外科でおへそのすき間を縫い閉じる短時間の処置です。
Q. ふくらみが急に固くなって戻らなくなりました。どうしたらよいですか?
すぐにご受診ください。腸がすき間にはまり込んだ「嵌頓」が疑われます。色が変わる、痛がって泣く、嘔吐をくり返すなどがあれば、夜間・休日でも救急医療機関の受診をおすすめします。
当クリニックでの対応
高浜台内科小児科クリニックでは、臍ヘルニアの診断と経過観察に加え、ご家族のご希望と適応に応じて圧迫療法を院内で行っています。
- 視診と触診による診断、上臍ヘルニアなど他の状態との区別を行います
- 乳児健診や予防接種の機会に、すき間のサイズの変化を継続的に確認します
- 圧迫療法をご希望の場合は、月齢・大きさ・皮膚の状態をふまえて適応を判断し、開始から終了まで経過をみます
- 嵌頓が疑われる、または手術が必要と考えられる場合は、小児外科のある連携病院へ速やかにご紹介します
おへそのふくらみが気になる、固くなって戻らない、急に痛がるなどの場合は、お早めにご相談ください。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。


