睡眠時無呼吸症候群

別名: SAS、睡眠無呼吸症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、OSA、Sleep Apnea Syndrome

豊田 弘邦

この記事の監修医師

豊田 弘邦

日本内科学会認定総合内科専門医

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睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)

この病気について

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っている間にのどの奥の気道が繰り返しふさがり、呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。なかでも最も多いのが閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と呼ばれるタイプです。このページでは主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群についてご紹介します。

日本では成人の約3〜7%がこの病気をもつと推定されています。特に中年以降の男性に多くみられますが、女性も閉経後に増加します。大きないびきや日中の強い眠気が代表的なサインです。

睡眠中に何度も呼吸が止まると、体に十分な酸素が行き渡らなくなります。その結果、心臓や血管に負担がかかり、高血圧や不整脈、脳卒中、心筋梗塞のリスクが高まります。また、日中の眠気は交通事故や仕事中のミスの原因にもなります。適切な治療を受けることで、これらのリスクを大きく減らすことができます。

主な症状

ご本人よりも、一緒に寝ているご家族が先に気づくことが多い病気です。

夜間(睡眠中)の症状

  • 大きないびき(隣の部屋にも聞こえるほど)
  • いびきの途中で呼吸が止まる(数秒〜数十秒間)
  • 息が止まったあと、「ガッ」と大きな音とともに呼吸が再開する
  • 何度も目が覚める(本人が気づかないことも多い)
  • 寝汗をかきやすい
  • 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)

日中の症状

  • 強い眠気(会議中や運転中にも眠くなる)
  • 起床時の頭痛や口の渇き
  • だるさ、疲労感がとれない
  • 集中力や記憶力の低下
  • イライラしやすい、気分が落ち込む
「いびきがうるさいと言われる」「しっかり寝ているはずなのに昼間眠い」という方は、睡眠時無呼吸の可能性があります。早めの受診をおすすめします。

原因

眠っている間は全身の筋肉がゆるみます。のどの奥(咽頭)を支える筋肉もゆるむため、気道が狭くなります。通常はそれでも呼吸に支障はありませんが、もともと気道が狭くなりやすい条件がある方では、気道が完全にふさがってしまい、無呼吸が起こります。

おもなリスク要因

  • 肥満 — 首まわりやのどの内側に脂肪がつくと、気道が圧迫されて狭くなります。最も大きなリスク要因です
  • あごの骨格 — あごが小さい方や奥に引っ込んでいる方は、もともと気道が狭い傾向があります。日本人を含むアジア人では、肥満でなくても骨格の特徴からOSAを発症することがあります
  • 加齢 — 年齢とともにのどの筋肉がゆるみやすくなり、気道が狭くなります
  • 男性 — 男性は女性に比べて首まわりに脂肪がつきやすく、発症率が2〜3倍高くなります
  • 扁桃肥大(へんとうひだい) — のどの奥にある扁桃(扁桃腺)が大きいと、気道を狭くします
  • 飲酒 — アルコールはのどの筋肉をさらにゆるめ、気道の閉塞を悪化させます
  • 鼻づまり — アレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)による鼻づまりがあると、口呼吸になりやすく、いびきや無呼吸が悪化します
  • 喫煙 — タバコの煙は気道の粘膜を腫れさせ、気道を狭くします

検査・診断

まずは問診と身体診察

いびきの状況や日中の眠気の程度を確認します。スクリーニング質問票を用いて、あわせて、首まわりの太さ、のどの奥の広さ、鼻の通り、あごの形などを診察します。

簡易検査(自宅で行う検査)

ご自宅で専用の小型装置を指と鼻に装着して一晩眠っていただきます。睡眠中の血液中の酸素濃度呼吸の気流を記録し、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)を算出します。痛みはなく、ふだん通りの環境で検査できるのが利点です。

精密検査(ポリソムノグラフィー / PSG)

簡易検査で診断が確定しない場合や、重症度をより正確に評価する必要がある場合には、終夜ポリソムノグラフィー(PSG)を行います。脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸など多くの項目を一晩かけて記録する検査です。

重症度の分類

重症度AHI(1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数)
正常5回未満
軽症5〜15回未満
中等症15〜30回未満
重症30回以上

治療

治療は重症度や症状の程度、原因に応じて組み合わせて行います。

CPAP(シーパップ)療法

中等症〜重症のOSAに対する標準的な治療法です。睡眠中に鼻や口にマスクを装着し、そこから空気を一定の圧力で送り込むことで気道がふさがるのを防ぎます。

  • 使い始めた夜から効果を実感される方が多く、いびきがなくなり、日中の眠気が改善します
  • 保険適用で使用できます(AHI 20以上が目安)
  • マスクの種類は複数あり、ご自身に合ったものを選べます
  • 装置は小型で、出張や旅行にも持ち運べます
CPAPは「つけている間だけ」効果がある治療です。毎晩、少なくとも4時間以上の使用が推奨されています。慣れるまでに時間がかかることもありますが、マスクの種類や圧力の調整で対応できますので、遠慮なくご相談ください。

口腔内装置(マウスピース)

軽症〜中等症のOSA、またはCPAPが使えない方に適しています。下あごを少し前に出した状態で固定するマウスピースを歯科で作製し、睡眠中に装着します。気道が広がり、いびきや無呼吸が軽減します。

生活習慣の改善

すべての患者さんに共通して大切な取り組みです。

  • 減量 — 体重を10%減らすとAHIが約26%改善するという報告があります。食事療法と運動を組み合わせましょう
  • 節酒 — 就寝前の飲酒は特に控えてください。アルコールはのどの筋肉をゆるめ、無呼吸を悪化させます
  • 禁煙 — 喫煙は気道の炎症を起こし、OSAを悪化させます
  • 睡眠薬の見直し — 一部の睡眠薬はのどの筋肉をゆるめるため、主治医と相談のうえ調整が必要な場合があります

体位療法

あおむけで寝ると舌の根元が気道に落ち込みやすくなります。横向きで寝ることで無呼吸が軽減する方もいます。背中にテニスボールを入れたリュックを背負って寝る方法や、専用の体位固定具を使う方法があります。

外科的治療

扁桃肥大が原因の場合は扁桃摘出術(へんとうてきしゅつじゅつ)が有効です。鼻づまりが原因の場合は鼻の手術を検討することがあります。これらは専門の耳鼻咽喉科へご紹介のうえ実施します。

日常生活での注意点

  • 体重管理を続けましょう — BMI 25未満を目標に。少しの減量でも症状の改善が期待できます
  • お酒は控えめに — 特に就寝前3〜4時間は飲酒を避けましょう
  • 横向きで寝る工夫を — 抱き枕を使う、背中側に枕を置くなどの方法があります
  • 鼻づまりを放置しない — アレルギー性鼻炎がある方は、しっかり治療しましょう
  • 規則正しい睡眠を — 毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間(7〜8時間)を確保しましょう
  • CPAPは毎晩使いましょう — 治療効果を最大限に得るため、できるだけ毎晩、一晩を通して装着してください
  • 運転に注意 — 治療が安定するまでは、長距離運転や眠気を感じた際の運転は控えてください

お子さまの場合

お子さまの睡眠時無呼吸は、成人とは原因や症状が異なることがあります。

  • 主な原因は扁桃・アデノイド肥大 — お子さまでは肥満よりも、扁桃やアデノイド(咽頭扁桃)が大きくなることが主な原因です
  • 症状の特徴 — いびき、口呼吸、寝相が悪い(体をよじる・頭を反らせる)、寝汗、おねしょの増加などがみられます
  • 日中の症状 — 成人のような眠気よりも、落ち着きがない、集中できない、学業成績の低下として現れることがあります
  • 成長への影響 — 睡眠の質が低下すると成長ホルモンの分泌に影響し、発育の遅れにつながることがあります
  • 治療 — 扁桃・アデノイド摘出術が第一選択です。手術により多くのお子さまで症状が大きく改善します
保護者の方へ:お子さまのいびきや口呼吸が続く場合は、「成長すれば治る」と考えずに、一度ご相談ください。早めの対応がお子さまの健やかな成長を支えます。

よくあるご質問

Q. いびきをかくだけでも睡眠時無呼吸ですか?

いびきは睡眠時無呼吸の代表的なサインですが、いびきだけで必ずしも無呼吸があるとは限りません。ただし、いびきが非常に大きい方、いびきの途中で息が止まると指摘される方、日中に強い眠気がある方は、一度検査を受けることをおすすめします。

Q. やせれば治りますか?

減量は非常に効果的な治療法のひとつです。体重が減ると首まわりの脂肪が減り、気道が広がります。軽症の方では減量だけで無呼吸がなくなることもあります。ただし、骨格が原因の場合は減量だけでは十分に改善しないこともありますので、CPAPやマウスピースと組み合わせることが大切です。

Q. CPAPは一生使い続けるのですか?

現時点では、CPAPは「使っている間だけ効果がある」治療です。そのため、多くの方は長期的に使い続けることになります。ただし、大幅な減量に成功した場合や、手術で原因が取り除かれた場合には、CPAPが不要になることもあります。定期的に検査を行い、治療の必要性を確認していきます。

Q. 睡眠時無呼吸と高血圧は関係がありますか?

はい、深い関係があります。睡眠時無呼吸があると、夜間に血圧が下がらず、日中の高血圧の原因になることがあります。降圧薬を飲んでも血圧が下がりにくい「治療抵抗性高血圧」の方では、約80%に睡眠時無呼吸が合併しているという報告もあります。CPAPで治療すると血圧が改善することが多くの研究で示されています。

Q. 検査は痛いですか?入院が必要ですか?

まず行う簡易検査は、指と鼻にセンサーをつけるだけで、痛みはまったくありません。ご自宅でふだん通りに眠っていただけます。より詳しい精密検査(PSG)が必要な場合は、専門の医療機関に1泊入院して行いますが、検査自体に痛みはありません。

当クリニックでの対応

高浜台内科小児科クリニックでは、睡眠時無呼吸の診断から治療まで対応しています。

  • 簡易睡眠検査をご自宅で受けていただけます。検査機器の貸し出しと結果の説明を行います
  • CPAP療法の導入・管理を行っています。マスクのフィッティングや圧力の調整、定期的なデータ確認を通じて、快適に使い続けられるようサポートします
  • いびきや日中の眠気でお悩みの方のスクリーニング(ふるい分け検査)を行います
  • 精密検査や外科的治療が必要な場合は、連携する専門医療機関や耳鼻咽喉科へご紹介いたします
  • 睡眠時無呼吸に合併しやすい高血圧や糖尿病などの生活習慣病もあわせて管理します

いびきや眠気が気になる方、ご家族から呼吸の停止を指摘された方は、お気軽にご相談ください。

この記事について

この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

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