2型糖尿病

別名: にがたとうにょうびょう、Type 2 Diabetes Mellitus、T2DM、インスリン非依存性糖尿病、成人発症型糖尿病

豊田 弘邦

この記事の監修医師

豊田 弘邦

日本内科学会認定総合内科専門医

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2型糖尿病(にがたとうにょうびょう)

この病気について

2型糖尿病は、糖尿病の中で最も多い型であり、全体の約90%以上を占めます。遺伝的な体質に、食べすぎや運動不足、肥満などの生活習慣が加わることで発症します。

2型糖尿病では、2つのメカニズムが血糖値の上昇に関わっています。

  • インスリン抵抗性 — 筋肉や肝臓、脂肪組織でインスリンが十分に効かなくなった状態です。体はインスリンを多く分泌して補おうとしますが、やがて膵臓の機能が追いつかなくなります
  • インスリン分泌の低下 — 膵臓のβ細胞の機能が徐々に低下し、体が必要とする量のインスリンを作れなくなります。診断時には、すでにβ細胞の機能が約80%低下しているという報告もあります

世界で8億人以上が糖尿病に罹患しており、その大部分が2型糖尿病です。日本でも約1,000万人の患者さんがいると推定され、特に中高年に多くみられますが、近年は若年層にも増加しています。

主な症状

2型糖尿病は多くの場合、初期には自覚症状がありません。健康診断や他の病気の受診時に血糖値の異常を指摘されて発見されることがほとんどです。

血糖値が高い状態が続くと、以下のような症状が現れることがあります。

  • のどの渇き(口渇)
  • トイレが近くなる(頻尿)、夜間の排尿
  • 体重減少
  • 疲れやすい、だるい
  • 目がかすむ
  • 傷が治りにくい
  • 手足のしびれやピリピリする感じ
  • 皮膚の感染症を繰り返す

これらの症状は高血糖がかなり進行してから現れることが多く、診断された時点で10〜30%の方にはすでに細小血管や大血管の合併症の兆候がみられるという報告があります。

健康診断で「血糖値が高め」「HbA1cが基準より高い」と指摘された方は、症状がなくても受診されることをおすすめします。早期発見・早期対応が合併症予防の鍵です。

原因

2型糖尿病は、遺伝的な素因と環境要因(生活習慣)の両方が複雑に絡み合って発症します。

おもなリスク要因

  • 肥満・過体重 — 最も重要なリスク要因です。特に内臓脂肪(おなか周りの脂肪)の蓄積がインスリン抵抗性を高めます。BMI 30以上の肥満の方は発症リスクが著しく高くなります
  • 家族歴 — 血縁者に2型糖尿病の方がいると、発症リスクが高まります。両親ともに2型糖尿病の場合はリスクがさらに上がります
  • 運動不足 — 定期的な運動はインスリンの効きをよくし、血糖値を下げる効果があります。運動不足はその恩恵が得られず、リスクが高まります
  • 年齢 — 加齢とともにインスリン分泌やインスリン感受性が低下します。35〜45歳以降はスクリーニングが推奨されます
  • 高血圧・脂質異常症 — これらの生活習慣病は糖尿病と合併しやすく、心血管疾患のリスクも高めます
  • 妊娠糖尿病の既往 — 妊娠中に血糖値が高くなった方は、将来2型糖尿病を発症するリスクが高くなります
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) — インスリン抵抗性を伴うことが多く、糖尿病のリスクが高まります

糖尿病前症(境界型)

糖尿病と診断される前に、「糖尿病前症(プレダイアビーティス)」と呼ばれる段階があります。この段階では血糖値が正常よりやや高いものの、糖尿病の基準には達していません。

  • HbA1c 5.7〜6.4%
  • 空腹時血糖値 100〜125mg/dL

糖尿病前症の段階で生活習慣を改善すると、糖尿病への進行を予防または大幅に遅らせることができます。

検査・診断

スクリーニング(早期発見のための検査)

以下に該当する35〜70歳の方には、定期的な糖尿病スクリーニングが推奨されます。

  • 肥満・過体重
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 家族歴(第一度近親者に2型糖尿病)
  • 妊娠糖尿病の既往
  • 心血管疾患の既往

検査結果が正常であれば3年ごと、糖尿病前症と判定された場合は1年ごとの再検査が推奨されます。

診断基準

検査項目糖尿病前症(境界型)糖尿病
HbA1c5.7〜6.4%6.5%以上
空腹時血糖値100〜125mg/dL126mg/dL以上
75gブドウ糖負荷試験2時間値140〜199mg/dL200mg/dL以上
随時血糖値(症状あり)200mg/dL以上
  • HbA1cが最も便利な検査です。食事の影響を受けず、いつでも採血できます
  • 無症状の場合は、後日再検査を行って確定します
  • HbA1cと空腹時血糖値の両方が基準を超えていれば、1回の採血で診断可能です

1型糖尿病との鑑別

2型糖尿病は通常、以下の特徴で1型糖尿病と区別されます。

  • 中年以降の発症が多い(ただし若年発症も増加)
  • 肥満を伴うことが多い
  • DKA(ケトアシドーシス)での発症はまれ
  • 膵島関連自己抗体が陰性
  • Cペプチド値が正常〜高値

ただし、近年は肥満を伴う1型糖尿病や、成人でゆっくり進行する1型糖尿病(LADA)もあり、判断が難しい場合もあります。迷う場合は自己抗体の測定が有用です。

当クリニックで行える検査

  • 血液検査(HbA1c、空腹時血糖値、脂質、腎機能、肝機能など)
  • 尿検査(尿糖、尿蛋白、尿アルブミン)
  • 必要に応じて自己抗体検査(外注)

HbA1cの結果は当日中にお伝えできます。

治療

2型糖尿病の治療は、食事・運動療法を基本に、必要に応じて薬物療法を組み合わせて行います。

血糖コントロールの目標

対象HbA1c目標TIR(CGM使用時)
多くの方7.0%未満70%以上
高齢の方・低血糖リスクが高い方8.0%未満またはそれ以上50%以上

HbA1cが1%下がるごとに、網膜症や腎症などの細小血管合併症のリスクが有意に低下することが大規模研究(UKPDS)で示されています。一方で、HbA1cを下げすぎると低血糖のリスクが高まるため、個々の患者さんに合わせた目標設定が大切です。

食事療法

  • 適正カロリーでバランスのよい食事を心がける
  • 炭水化物の量と質に気を配る(食物繊維の多い食品を選ぶ)
  • 清涼飲料水(砂糖入り飲み物)を控える
  • 1日3食、規則正しく食べる

運動療法

  • 週150分以上の中等度の有酸素運動(速歩き、水泳など)が推奨されます
  • 筋力トレーニングも血糖コントロールの改善に有効です
  • 日常生活の中で体を動かす機会を増やしましょう(階段を使う、近くなら歩くなど)

薬物療法

生活習慣の改善だけでは血糖値が目標に達しない場合、お薬を使用します。

  • メトホルミン — 多くの方で最初に使われる薬です。肝臓からのブドウ糖放出を抑え、インスリン感受性を改善します
  • SGLT2阻害薬 — 腎臓からブドウ糖を尿中に排出させる薬です。血糖低下に加えて、心不全や腎臓病の予防効果が期待できます
  • GLP-1受容体作動薬 — インスリン分泌を促し、食欲を抑える注射薬です。体重減少効果と心血管疾患の予防効果があります
  • DPP-4阻害薬 — 食後のインスリン分泌を促す薬です。低血糖のリスクが比較的低いのが特徴です
  • SU薬(スルホニル尿素薬) — インスリン分泌を促します。効果は確実ですが、低血糖や体重増加に注意が必要です
  • インスリン製剤 — 病気が進行してインスリン分泌が大幅に低下した場合に使用します
最近の研究では、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬には、血糖を下げる効果だけでなく、心血管疾患や腎臓病のリスクを独立して下げる効果があることが分かっています。心臓や腎臓の状態も考慮した薬の選択が大切です。

合併症予防のための総合管理

2型糖尿病の方では、血糖管理に加えて以下の管理も重要です。

  • 血圧管理 — 糖尿病と高血圧の合併は心血管リスクを大きく高めます
  • 脂質管理 — スタチンなどによるコレステロール管理
  • 禁煙 — 喫煙は心血管疾患のリスクを著しく高めます
  • 定期的な合併症スクリーニング — 眼底検査、腎機能検査、足の診察など

これらの多角的なリスク管理(血糖・血圧・脂質・禁煙)が、心血管疾患の予防に最も効果的であることが研究で示されています。

日常生活での注意点

  • 体重管理 — 現在の体重から5〜7%の減量でも、血糖コントロールが大きく改善します
  • 食事の工夫 — 野菜を先に食べる、ゆっくり噛んで食べるなど、食後血糖の急上昇を防ぐ工夫をしましょう
  • 間食・飲み物に注意 — 菓子パンやスナック菓子、清涼飲料水は血糖値を急激に上げます
  • アルコールは適量に — 飲酒は低血糖のリスクを高めることがあります。飲む場合は食事とともに適量を守りましょう
  • 足のケア — 糖尿病が長期化すると足の感覚が鈍くなることがあります。毎日足を観察し、靴ずれや水虫に気をつけましょう
  • ストレス管理 — ストレスは血糖値を上げます。十分な睡眠とリラックスの時間を確保しましょう
  • お薬を忘れずに — 処方されたお薬は指示どおりに服用し、自己判断で中止しないでください

お子さまの場合

近年、肥満の増加にともない、お子さまの2型糖尿病も増えてきています。

お子さまの2型糖尿病の特徴

  • ほとんどが思春期以降(10歳以上)に発症します
  • 肥満(BMIが95パーセンタイル以上)を伴うことが多いです
  • 約40%は無症状で、スクリーニング検査で発見されます
  • 首や脇の下の皮膚が黒ずむ変化(黒色表皮腫)はインスリン抵抗性のサインで、2型糖尿病の50〜90%にみられます
  • まれに糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で発見されることもあります(5〜12%)

スクリーニングの対象

以下の条件を満たすお子さまには、糖尿病のスクリーニングが推奨されます。

  • 過体重または肥満
  • かつ、以下のうち1つ以上に該当する

- 家族(第一度・第二度近親者)に2型糖尿病がいる
- 黒色表皮腫がある
- 多嚢胞性卵巣症候群がある
- 母親が妊娠糖尿病だった

成人との違い

お子さまの2型糖尿病は、成人よりもインスリン抵抗性が強く、β細胞機能の低下が速い傾向があります。そのため、早期の介入と継続的な管理が特に重要です。

お子さまの肥満や血糖値が気になる場合は、お気軽にご相談ください。

よくあるご質問

Q. 2型糖尿病は治りますか?

「完治」するとは言えませんが、特に早期であれば、食事と運動の改善によって血糖値が正常域に戻り、薬を使わずに管理できるようになる方もいらっしゃいます。継続的な生活習慣の維持が鍵です。

Q. 糖尿病の薬は一度飲み始めたら一生飲み続けるのですか?

必ずしもそうではありません。生活習慣の改善により血糖値が安定すれば、お薬の減量や中止が可能な場合もあります。ただし、自己判断でお薬を中止せず、必ず主治医と相談してください。

Q. 糖尿病でも甘いものは食べられますか?

食べてはいけないわけではありませんが、量と頻度に注意が必要です。甘いものは血糖値を急激に上げるため、少量にとどめ、食事全体のバランスの中で調整することが大切です。

Q. 運動はどの程度すればよいですか?

週に合計150分以上の中等度の運動(速歩き程度)が推奨されています。1回にまとめる必要はなく、1日30分×5日など分割しても構いません。筋力トレーニングを週2〜3回加えるとさらに効果的です。

Q. 低血糖が心配です。

メトホルミンやSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬などは、単独では低血糖を起こしにくいお薬です。SU薬やインスリンを使用している方は低血糖に注意が必要です。低血糖の症状(冷や汗、手のふるえ、動悸、空腹感)が現れたら、すぐにブドウ糖やジュースをとりましょう。

当クリニックでの対応

高浜台内科小児科クリニックでは、2型糖尿病の診断から日常的な管理まで幅広く対応しています。

  • 血液検査(HbA1c、血糖値、脂質、腎機能、肝機能)による定期的な経過観察
  • 尿アルブミン検査などによる合併症スクリーニング
  • 生活習慣の改善に向けたアドバイス
  • 個々の患者さんに合わせた薬物療法の提案と調整
  • 高血圧や脂質異常症などの併存疾患の総合管理

専門的な精密検査やインスリン導入が必要な場合は、連携する総合病院や糖尿病専門医へご紹介いたします。

健康診断で血糖値の異常を指摘された方、糖尿病の家族歴がある方、体重が気になる方は、お気軽にご来院ください。予約なしでも受診いただけます。

この記事について

この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

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