お腹の痛みは比較的よくある症状ですが、強さも様々です。症状が強ければ受診することもありますが、少しくらいの腹痛では我慢してしまうこともあります。この記事では、都内大学病院の救急医療センターで、多くの救急患者を診断治療してきた院長が、どのような症状があったらすぐに救急受診したほうが良いのかをお伝えできればと思います。
救急受診が必要な症状
1. 持続する腹痛
多くのおなかの痛みは便意をもよおしたときのような、痛んだり・和らいだりと波があることがほとんどです。腸が動いたときに痛み、痛みのないときはケロッとしていることもあります。 注意する必要があるのは、【腹痛が持続する】なおかつ【おなかにひびく症状(わらったり、歩いたりした振動でお腹が痛む)がある場合】です。この2つの症状が見られるときは、お腹の中に強い炎症や、液体(血液やお腹の水)が溜まっていることがあり、手術・処置なども含めた緊急診療を必要とすることがあります。当院ではこのような症状の方が来られた場合は、血圧・脈拍などのバイタルサインをチェックするとともに、すぐに超音波診断装置(エコー)を行い、考えうる原因によっては詳しい検査や手術が可能な連携病院にすぐにご紹介します。
持続するお腹の痛みの原因となる主な病気
虫垂炎、消化管穿孔、急性胆のう炎、急性膵炎、憩室炎など2. 血便 + 腹痛
血便を伴う腹痛は、虚血性腸炎、感染性腸炎を考えます。また、何度か繰り返す場合は炎症性腸疾患などが考えられます。入院、点滴し腸を休ませたほうが良いことがあり、救急受診をおすすめします。
血便+腹痛の主な病気
感染性腸炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患など3. 発疹 + 腹痛
食後にじんま疹・腹痛を伴う場合は強いアレルギー(アナフィラキシー)を疑います。息苦しさや、意識が飛びそうな血圧低下症状など、ショックの症状があればすぐに119(救急要請)をしてください。ショック症状がない場合でも、すぐ受診をしてください。ほか、お子さんで下肢などの発疹をともなう腹痛がある際はアレルギー性紫斑病が疑われます。症状が強い場合はすぐの受診を、症状が強くなければ翌日小児科の受診をしてください。
発疹 + 腹痛の原因となる主な病気
アナフィラキシー、アレルギー性紫斑病など4. 突然の腹痛
中高年以降で持病(高血圧、糖尿病など)がある方の突然の強い腹痛は血管が破れた・詰まったなどの痛みを疑います。命に関わる可能性がありますので119(救急要請)をしてください。
突然の腹痛の原因となる主な疾患
大動脈瘤切迫破裂、大動脈解離、腎梗塞、脾梗塞など5. 手術歴(おなかを開ける手術)のある方の腹痛
手術歴(おなかを開ける手術)のある方の腹痛は、手術したばかりであれば、手術関連合併症を疑います。術後から数ヶ月以上経過していれば、腸閉塞が疑われます。いずれも救急受診をしてください。
手術開腹歴がある方の腹痛の主な疾患
手術関連合併症(術後早期)、腸閉塞(術後晩期)さいごに
色々と説明しましたが、【持続する痛みで、ジャンプするとおなかにひびく】【スイッチを入れたように突然おなかが痛くなった】【蕁麻疹と腹痛がでてきた】などの症状は緊急を要しますので、ためらわず救急受診をしてください。もちろん当院でも、診察や救急要請のご提案など、適切なアドバイスをさせていただきますので、迷った際はまずお電話でご一報いただければと思います。