当院の性感染症の検査
性感染症(STD)は、特別な病気ではなく、誰もがかかる可能性のある一般的な病気です。自覚症状が現れないまま進行して、将来の不妊や胎児へのリスクとなる可能性がある病気も存在します。また、男女で症状の現れ方が異なることも珍しくありません。こうしたことから、感染に気付かないこともあります。
適切な治療で比較的短期間に治せる性感染症も多く、当院では無症状であっても結婚や妊娠(パートナーの妊娠も含む)を考え始めた時期に検査を受けることをおすすめしています。各疾患の詳細についてはページをスクロールしてご覧ください。
性感染症(STD)とは
セックス、オーラルセックス、アナルセックス、キスなどの行為によって感染する病気の総称です。以前は性病と呼ばれていましたが、現在は性感染症(STD/STI)という名称になっています。
予防法と対処法
予防のPOINT
最初からコンドームを着用することで性感染症をある程度防ぐことができます。
対処のPOINT
疑わしい症状がある場合、またはパートナーに症状がある場合、そして「もしかしたら」と思ったら、できるだけ早く受診して適切な検査を受け、早期治療につなげてください。感染症の有無を知る唯一の方法は検査です。
主な性感染症(STD)
淋病(淋菌感染症・咽頭の感染も含む)
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 2〜7日間 |
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治療期間 | 1日〜 |
淋菌は性器・口、または肛門を介して感染します。なお通常、日常生活(キスやハグ、トイレの便座・お風呂、食器など)から感染することはありません。淋菌に感染すると男性の45%、女性の15%に症状が出るとされています1。男性は排尿時の強い痛みや黄色い膿(うみ)などの症状や睾丸痛を起こすことがあります。女性はおりものの増加程度のこともあり感染に気付きにくいことがありますが、不正性器出血や排尿時痛など不快な症状がでることや、深刻な経過として不妊、異所性妊娠(子宮外妊娠)、持続する骨盤痛、骨盤内腹膜炎、全身の感染症である播種性淋菌感染症などを生じることがあります。一方で20%のかたで薬で治療せず自然治癒があるとされていますが、症状の有無のみでは治癒したかどうか分からず、自然治癒せずに持続感染し、前述の深刻な経過を起こすこともあるため早期の検査と治療が重要です。当院では最新のPCR機械を導入しており、クラミジア、淋菌の診断は当日90分ほどで行うことができます。治療後の治癒を確認する再検査(Test of Cure)は14日後に行うことが推奨されています。性器・泌尿器の淋菌感染症は95%の治癒率とされ、1回の治療で治癒が可能です。一方で咽頭淋菌感染は一般的に治癒率が80%程度とされ、咽頭淋菌感染症の方については再検査を強くおすすめしております。
クラミジア(咽頭の感染も含む)
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 1~4週間程度 |
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治療期間 | 1日〜 |
クラミジアは世界で最も多い性感染症の一つであり、新規感染者のうちの6割が16歳から24歳とされています。25歳未満の女性の約15%、男性の約5%が感染していると推定されています。男性の場合は約半数の方に、排尿時の痛みや尿道からの分泌物などが症状として見られますが、女性の場合は7割が無症状で、治療をしないと腹痛の原因や、将来の不妊の原因になることがあります。一方で、薬で治療せず自然治癒することも15-50%前後あるとされていますが、症状の有無では治癒したかどうかわからず、前述のとおり後遺症を招きかねないため、適切な検査と治療を受けることが重要です。また淋菌などと同様に、クラミジアに感染している場合は、治療後であっても、パートナーから再び感染してしまう可能性があるため、パートナーも一緒に検査・治療を受けることも重要です。なおクラミジアは日常生活(キスやハグ、トイレの便座・お風呂、食器など)から感染することはありません。クラミジアの治療は1回の抗菌薬内服で95%以上の治癒が可能であり、当院では症状のある方・リスクのある方に対して積極的に検査をおすすめしております。また当院では最新のPCR機械を導入しており、クラミジア、淋菌の診断を90分ほどで行うことが可能です。治癒を確認する再検査は4週後に行うことが推奨されています。
細菌性腟症・雑菌性尿道炎(非クラミジア性・非淋菌性尿道炎)
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 1~10日程度 |
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治療期間 | 数日 |
汚れた手などで性器に触れ、細かい傷口から雑菌が入って発症します。おもに排尿痛を起こします。
梅毒(第1期・第2期)
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 3週間~3ヶ月程度 |
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治療期間 | 2~3ヶ月程度 |
ひと昔前までは日本でほとんど発症するケースがなくなっていましたが、現在は感染者数が増加傾向にあります。皮膚や粘膜の細かい傷から病原菌が入って発症します。第1期は性器に痛みをともなわない硬いしこりが生じ、第2期になると手足を中心に全身へ小さな斑点ができるなど、感染後の期間によって異なる症状が現れます。症状が出ないケースもありますので疑わしい場合も必ず検査を受けるようにしてください。
性器ヘルペス
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 3日~1週間程度 |
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治療期間 | 症状によって異なり、再発を繰り返すこともあります |
ヘルペスの病変部と接触することで感染して発症します。性器に小さな水疱ができて、潰瘍になり、痛みやかゆみを起こします。女性が初感染して発症した場合、痛みなどが強く出ることがあります。感染してしまうとウイルスを完全に不活化することができず、潜伏して再発を繰り返すことがあります。その場合には、再発を抑える治療が必要です。
ヒトパピローマウイルス(HPV)
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 数ヶ月~数年程度 |
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女性は生涯に1度は感染するとされていますが、ほとんどの場合は免疫力によってウイルスが不活化されます。まれにウイルスが残ると、性器周辺に細かいできものができる尖圭コンジローマを発症したり、ウイルスの型によっては子宮頸がんの原因となります。ワクチンで防げるため、接種することをおすすめします。
尖圭コンジローマ
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 1ヶ月~1年程度 |
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治療期間 | 症状によって異なります |
ヒト・パピローマ・ウイルスに感染して性器や肛門のまわりにイボができます。自覚症状が出ることはほとんどありませんが、かゆみや痛みを起こす場合もあります。
トリコモナス
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 1~3週間程度 |
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治療期間 | 1~2週間 |
トリコモナス原虫に感染して発症します。性行為だけでなく、タオルの共有や便座などからの感染も起こります。トリコモナスは罹病率は男性1%2, 女性でも1-2%とされており、感染した7割の男性、8割の女性は無症状とされています。生じうる症状としては外陰部のかゆみや灼熱感、おりものの増加といった症状を起こします。男性は軽い排尿痛程度で感染に気付かないケースが多くなっています。内服薬や膣錠による治療を行います。
カンジダ
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 何年も経過してから発症することがあります |
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治療期間 | 1週間 |
体内にも存在するカンジダという真菌(カビ)によって発症し、性行為だけでなくストレスなどによって自然発症するケースもあります。女性の発症が多い傾向があり、外陰部の赤み、腫れ、かゆみなどを起こします。内服や膣錠などによる治療を行います。繰り返す場合は再発を防ぐのための治療を行うことがあります。
B型肝炎
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 1~6ヶ月程度 |
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治療期間 | 2~3ヶ月程度 |
B型肝炎ウイルスによる感染症で、ワクチンによる予防が可能です。感染初期に倦怠感、吐き気、頭痛、尿の色が濃くなるといった症状を起こします。全身に黄疸が出た場合には入院による治療が必要になります。
C型肝炎
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 2週間~3ヶ月程度 |
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治療期間 | 半年~1年程度 |
C型肝炎ウイルスの感染によって発症します。性行為による感染のほか、血液を介した感染も多くを占めます。放置すると肝硬変や肝臓がんを発症することもありますので、早期の治療が重要です。なお、感染しても自覚症状がないことが多くなっています。C型肝炎は近年の治療の進歩により、多くの場合、治療でC型肝炎ウイルスの排除が可能となりました。
HIV感染症
感染後、症状が出るまでの潜伏期間 | 3ヶ月~数年程度 |
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治療期間 | 後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を遅らせる治療が可能です |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染すると保菌者(キャリア)になります。現在は発症を遅らせる治療法が確立しています。ただし、後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症すると、免疫細胞が破壊されて免疫不全を起こし、命に関わる感染症をおこしやくなります。