尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎など)
別名: 膀胱炎、腎盂腎炎、尿路感染、UTI、尿路炎症
この記事の監修医師
豊田 弘邦
日本内科学会認定総合内科専門医
当院での対応
- 診察・問診
- 尿検査(その場で結果をご説明)
- 尿培養検査(必要に応じて外部の検査機関に依頼)
- 抗菌薬の処方
- 膀胱炎を繰り返す方の予防のご相談
- 腎盂腎炎など重症が疑われる場合の専門医療機関への紹介
尿路感染症は、膀胱や腎臓に細菌が感染することでおこります。膀胱炎や腎盂腎炎などをあわせて尿路感染症といいます。
膀胱炎
膀胱に細菌が感染して起こる感染症を膀胱炎といいます。膀胱炎は細菌が尿道から膀胱に逆流して起こります。
膀胱炎の症状はつぎのようなものです
- 排尿時に痛みやしみる感じがある(排尿時痛)
- 頻繁にトイレにいきたくなる(頻尿)
- 急におしっこしたくなる、おしっこしたくなってから待てずにすぐでてしまう・もらしてしまう(尿意切迫感)
- 尿に血が混じる(血尿)
- おしっこをし終えたのに、まだ出したい感じが残っている(残尿感)
など
腎盂腎炎(じんうじんえん)
腎臓に感染すると腎盂腎炎(じんうじんえん)といいます。腎盂腎炎は、細菌がさらに高い位置にある腎臓に移動して起こります。
このため、膀胱炎のほうが腎盂腎炎よりも起こりやすいです。膀胱炎、腎盂腎炎ともに、男性よりも女性に多く見られます。また、膀胱炎と腎盂腎炎は同じ尿路の感染症ではありますが、腎盂腎炎は全身の感染症となります。そのため腎盂腎炎の症状としては膀胱炎にはない発熱や吐き気などの症状もでることがあり、しばしば重症になることがあり注意を要します。
腎盂腎炎の症状はつぎのようなものです
- 膀胱炎症状 (排尿時痛・頻尿・尿意切迫・血尿・残尿感など)
- 発熱
- 背中・腰のあたりの痛み
- 吐き気・嘔吐
など
尿路感染症の検査・診断と治療
診断・検査
尿路感染症の診断は上記症状の有無を問診(もんしん:お話をうかがうこと)し、診断します。また必要に応じて尿検査や尿培養検査を行うことがあります。尿検査では尿の中に白血球や亜硝酸塩(あしょうさんえん:膀胱内に6時間以上、細菌がいたことを示すとされています)があることをしらべ、間接的に細菌がいる証拠をつかみます。検査自体は機械にかけてから1分以内に終わります。尿培養検査では、細菌の菌種と抗菌薬への感受性をしらべ、治療の参考にします。培養検査には3−5日間程度の時間を要するため、よくある菌種(9割が大腸菌とされますが、併存症や以前の培養の結果を考慮に入れます)を想定し、治療を開始します。治療経過と培養検査結果をもとに治療を更に最適化していきます。
尿検査・尿培養検査はいずれもお手洗いで採尿カップに尿を入れていただくだけです。
治療
尿路感染症の治療は抗菌薬(抗生物質)で治療します。この薬は感染症の原因となる細菌を殺すことで効果を発揮します。もらったお薬はすべて飲みきりましょう。そうしないと再発や難治化(今後の治療が難しくなること)することがあります。
膀胱炎
3−7日間、抗菌薬を内服する必要があります。
腎盂腎炎
10−14日間、点滴もしくは内服する必要があります。解熱するまでは抗菌薬の点滴を行うことがあり、解熱後は抗菌薬の内服をおこないます。また重症度や併存症(その他にかかっている病気:糖尿病・泌尿器疾患・神経疾患など)によっては、入院をおすすめすることがあります。
一般的な経過
膀胱炎
内服を開始してから、1日以内に症状が改善し始めることがおおいです。
腎盂腎炎
治療を開始してから3日以内に解熱することがほとんどです。その他の腎盂腎炎の症状(背部痛など)も1週間程度で改善してゆきます。3日以内に解熱しない場合、通常は造影剤を使ったCTで精査を行い治療方針を決定します。そのような場合当院では病院へご紹介いたします。(治療開始後も、3日以内に解熱しない場合は、腎盂腎炎以外の原因のことや、腎盂腎炎がさらに悪くなってしまい腎臓に膿(うみ)ができた状態(巣状細菌性腎炎や腎膿瘍)に進展していることがあり、これらは一般的には腎盂腎炎よりも更に長い治療期間を要します。)
膀胱炎の予防
膀胱炎様症状を繰り返す場合は、膀胱炎以外にも症状をおこす原因があることがありますので確認の検査を行います。もし膀胱炎を繰り返している場合は、次の予防をおすすめしています。
水分をよく摂る
普段の水分摂取にプラス1.5Lの水分摂取を行うことで、膀胱炎を予防できるとされています。
(更年期以降)膣内エストロゲン製剤を用いる
膀胱炎を予防できます。
セックスの後に排尿をする
これは効果が証明されていませんが、少なくとも簡単で害がないため、おすすめします。
抗菌薬を予防内服する
まず他の方法を試し、効果がない場合で、メリットがデメリットよりも大きい場合に考慮されますが、通常はあまりおすすめされません。
早めの受診をおすすめする症状
膀胱炎の症状に加えて、発熱や悪心(吐き気)などの全身症状を伴う場合は、腎盂腎炎などが疑われます。早めに受診してください。
一方、膀胱炎の症状があっても、水分を多めにとることなどで症状が改善してきている場合は、ご自宅で経過をみていただいてかまいません。症状が改善しない場合や強くなる場合は受診してください。
繰り返す膀胱炎について
1年に2回以上、膀胱炎を繰り返す場合には、当院では次のような対応を行います。
- 尿培養検査を行い、次回以降の抗菌薬の選択に役立てます
- 再発予防のための生活指導(前述の予防法のご案内)
特定の方へ(妊娠中・男性・お子さま)
妊娠中の方
妊娠中は、症状のない細菌尿(無症候性細菌尿)でも早産のリスクがあるとされ、治療の対象となります。妊娠中で膀胱炎の症状がある場合や、健診などで細菌尿を指摘された場合は、ご相談ください。
男性の方
男性の膀胱炎は年間発症率3%程度、これは女性の1/4ほどの発症率とされ、比較的まれです。前立腺炎など、ほかの病気との鑑別が必要になることもあります。
お子さま
小児科を併設しており、お子さまの膀胱炎・尿路感染症にも対応しています。
小さなお子さまは排尿の症状をうまく訴えられず、原因のはっきりしない発熱だけがサインのことがあります。そのため、乳幼児の発熱では尿路感染症も考えて尿検査を行うことがあります。
お子さまの尿路感染症、とくに腎盂腎炎では、腎臓に傷(腎瘢痕(じんはんこん))が残り、将来の高血圧や腎機能の低下につながることがあります。早めに診断し治療することが、腎臓を守るために大切です。
便秘や、おしっこ・うんちを我慢する癖は、お子さまの尿路感染症の原因や、繰り返す要因になることがあります(とくに繰り返す場合に多くみられます)。当院では便秘や排尿・排便のご相談・指導も行い、規則的なトイレ習慣づくりをサポートします。
尿路感染症を繰り返す場合は、尿路の奇形や膀胱尿管逆流(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅう:おしっこが膀胱から腎臓へ逆流する状態)が背景にあることがあります。必要に応じて超音波検査を行い、小児腎臓の専門医へご紹介します。
受診・ご予約について
膀胱炎・尿路感染症は、問診と尿検査(その場で結果をご説明します)で診断し、検査・診断・お薬の処方まで当日中に完結します。ご予約はWeb受付が便利です(お電話でも承ります)。当日のご予約も可能です。排尿時の痛みや頻尿などが気になる場合は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q抗生剤(抗菌薬)は飲みきらないとだめですか
ぜひ飲みきってください。治療をご自身の判断で途中でやめると再発や難治化の危険があります。内服後に発疹などのおくすりの副作用が疑われる場合は、すぐにご相談ください。
Qクランベリージュースやクランベリー製剤は効果がありますか
先行する研究ではクランベリーのはっきりとした効果は示されておらず、効果がないとされているものもあります。しかし、性交後の排尿と同じく、効果が確かめられていないものの、特に害もないため、費用がリーズナブルであれば、試してみること自体に問題ないものと考えます。
Q症状はないけれど尿中に細菌がいる(細菌尿)といわれました、治療したほうがいいですか
これは無症候性細菌尿(むしょうこうせいさいきんにょう)と言われる状況です。当院で症状のない細菌尿に対して治療をする状況は、妊婦さんの細菌尿のみです。妊婦さんの無症候性細菌尿は早産のリスクがあるとされ、治療の対象となります。一方で60代以降の方の10%程度、80代では20%程度の方に無症候性細菌尿が認められるとされ、それらを治療するメリットは今のところ不明とされているため、一般的には症状がないことを経過観察していただき、症状がある際も、治療をおこなうか慎重に決定します。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

