慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん/COPD)
別名: COPD、肺気腫、慢性気管支炎、気流制限

この記事の監修医師
豊田 弘邦
日本内科学会認定総合内科専門医
この病気について
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、長い年月をかけて気道(空気の通り道)や肺が傷み、息を吐き出しにくくなる病気です。たばこの煙などを吸い込み続けることで肺に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなったり、酸素を取り込む肺胞(はいほう)が壊れたりします。その結果、いったん落ちた肺の働きは元に戻りにくく、慢性的な咳・痰・息切れが続きます。
40歳以上のおよそ10人に1人にみられ、年齢とともに増えていきます。ゆっくり進む病気ですが、適切な治療によって症状をやわらげ、急な悪化を防ぎ、肺の働きが落ちる速さを緩やかにすることができます。「年のせい」と見過ごされやすいため、気になる症状があれば一度調べることが大切です。
主な症状
COPDの代表的な症状は次の3つです。徐々に進むため、ご本人が気づかないうちに活動を控えていることもあります。
- 体を動かしたときの息切れ — 坂道や階段で息が切れるのが、もっとも多い早めのサインです
- 慢性的な咳 — 長く続く咳。朝に多いことがあります
- 痰(たん)— 咳とともに痰が出ます
このほか、ゼーゼー・ヒューヒューという音や胸の苦しさが出ることもあります。
次のようなときは「増悪(ぞうあく=急な悪化)」のことがあり、早めの受診をおすすめします。
- 息切れや咳・痰が、いつもよりはっきり強くなった
- 痰の量が増えた、色が黄色や緑に変わった
- 発熱や強い息苦しさを伴う
原因
最大の原因は、長期間にわたる喫煙です。たばこの煙が気道と肺胞に炎症を起こし、少しずつ壊していきます。吸った量が多く期間が長いほど危険性は高まりますが、発症のしやすさには個人差があり、すべての喫煙者が発症するわけではありません。
たばこ以外にも、次のような要因が関わります。
- 受動喫煙(周囲のたばこの煙)
- 仕事や家庭での粉じん・化学物質・煙(薪や炭などの煙を含む)の吸入
- 子どものころの重い肺炎や結核、早産、小児期からのぜんそく
- 大気汚染
- まれに、生まれつきの体質(遺伝的な要因)
たばこを吸わない方でも、これらの要因で発症することがあります。
検査・診断
診断の中心は 呼吸機能検査(スパイロメトリー) です。機械に思いきり息を吹き込み、「どれだけ速く・多く吐き出せるか」を測ります。痛みはなく、短時間で終わります。気管支を広げる吸入薬の前後で検査し、薬を使っても戻りきらない気流の制限(息の吐きにくさ)が続いていれば、COPDと診断します。
あわせて、胸部レントゲンや血液検査を行い、心不全や他の肺の病気など、似た症状を起こす病気がないかを確認します。
検査は、息切れ・慢性の咳・痰などの症状があり、喫煙などの危険因子をお持ちの方に行います。症状のない方への検査はおすすめされません。診断後は、息切れの程度や悪化のしやすさもあわせて、重症度を評価します。
治療
治療は、症状をやわらげ、急な悪化(増悪)を減らし、生活の質と活動を保つことを目標に、段階的に進めます。
最も大切なのは 禁煙 です。禁煙は、落ちていく肺の働きの速さを緩やかにする、もっともはっきりした方法です。何歳から始めても意味があり、喫煙中のすべての方におすすめします。
薬物療法の柱は、吸入の気管支拡張薬(気道を広げて息切れをやわらげ、増悪を減らす吸入薬)です。症状や悪化のしやすさに応じて種類を組み合わせたり、一部の方には吸入のステロイド薬を加えたりします。
このほか、次の治療を組み合わせます。
- ワクチン接種(インフルエンザ・肺炎球菌・新型コロナなど)で、感染による増悪を防ぐ
- 呼吸リハビリテーション(運動や呼吸の訓練)で、息切れをやわらげ、体力と生活の質を高める
- 安静時から血液中の酸素が大きく不足する重い方には、在宅酸素療法を行う(生存の改善が示されています)
さらに進んだ治療が必要な場合は、専門の医療機関へご紹介します。
日常生活での注意点
COPDとうまく付き合うために、毎日の中でできることがあります。
- 禁煙を続け、周囲のたばこの煙も避ける
- 粉じん・煙や、大気汚染・強い寒さの日は、負担の大きい活動を控えめに
- ワクチンを受ける(感染は増悪のきっかけになります)
- バランスのよい食事と体重管理(太りすぎは息切れ、やせすぎは体力低下につながります)
- 無理のない範囲で体を動かす(動かないでいると体力が落ちます)
- 吸入薬を正しく使う(使い方で効果が変わります。不安があればご相談ください)
- 息切れ・痰の悪化や痰の色の変化など、増悪のサインに早く気づく
お子さまの場合
COPDは、長い年月にわたって気道や肺がダメージを受けて起こる、おもに大人の病気です。お子さまがCOPDになることは基本的にありません。
ただし、子ども時代の経験が、将来の肺の育ち方やCOPDのなりやすさに関わることがわかっています。早産、子どものころの重い肺炎、小さいころからのぜんそく、そして受動喫煙(周囲のたばこの煙)は、肺の発達に影響し、大人になってからのリスクを高める可能性があります。
お子さまの肺を守るために、ご家庭ではたばこの煙にさらさないことが大切です。また、ぜんそくのあるお子さまは、きちんと治療を続けることがすすめられます。
よくあるご質問
Q. たばこをやめれば、COPDは治りますか?
いったん落ちた肺の働きを元どおりにすることはできませんが、禁煙は、肺の働きが落ちる速さを緩やかにする、最も大切な治療です。何歳から始めても意味があり、咳や痰が軽くなる方も多くいます。
Q. 吸入薬は、ずっと続ける必要がありますか?
多くの場合、症状を抑え増悪を防ぐために、続けて使います。調子がよいときも自己判断でやめず、気になることがあれば医師にご相談ください。吸い方も効果に大きく影響しますので、迷ったらいつでもお尋ねください。
Q. かぜをひくと悪化しますか?
はい。COPDの急な悪化(増悪)の多くは、ウイルスや細菌などの感染が引き金になります。息切れや痰が強くなったり、痰の色が変わったりしたら、早めに受診してください。日ごろのワクチン接種や手洗いも予防に役立ちます。
Q. 飛行機や高い山に行っても大丈夫ですか?
多くの方は問題ありませんが、飛行機の機内や高地では空気中の酸素が薄くなり、息苦しさが出ることがあります。重症の方や酸素を使っている方は、出かける前に医師にご相談ください。必要に応じて、酸素の準備や事前の評価を行います。
当クリニックでの対応
高浜台内科小児科クリニックでは、COPDの診断から日々の管理まで継続して対応します。
- 呼吸機能検査(スパイロメトリー)による診断と、レントゲン・血液検査での他の病気との区別
- 禁煙のサポート、吸入薬の選択と吸い方の指導
- インフルエンザ・肺炎球菌などのワクチン接種
- 急な悪化(増悪)への対応と、再発を防ぐ管理
- 骨粗しょう症や睡眠時無呼吸症候群など、併存しやすい病気の評価
重い低酸素で酸素療法が必要な場合や、より進んだ治療・精密検査が必要な場合は、呼吸器の専門医療機関へすみやかにご紹介します。息切れや長引く咳・痰が気になる方、たばこを吸っていて心配な方は、お早めにご相談ください。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。


