アデノウイルス感染症
別名: アデノウイルス感染症、咽頭結膜熱、プール熱、流行性角結膜炎、はやり目
この記事の監修医師
中永 思蘭
日本小児科学会小児科専門医
アデノウイルスは、のどのかぜ・高熱・結膜炎・下痢など、まったく違って見える症状を一手に引き起こすウイルスです。60以上の「型」があり、どの型に感染したかで出てくる病気の顔つきが変わります。だから「アデノです」と言われても、隣の子とまったく症状が違う、ということが普通に起こります。
10歳までにほとんどの人が一度は感染し、大人になる頃にはほぼ全員が感染したことのあるウイルスです。乳幼児の発熱の5〜10%程度を占め、保育園や家庭内で広がりやすいのが特徴です。
熱は何日で下がりますか?
多くは3〜5日、長いと1週間近く続きます。全体の経過は5〜7日、症状によっては2週間ほど尾を引くこともあります。
アデノウイルスの発熱で最も多いご相談が「解熱剤を使ってもすぐまた上がる」「3日経っても下がらない」というものです。これはアデノウイルスでは想定内の経過です。かぜのウイルスの中でアデノウイルスは特に高い熱を出しやすく、39〜40℃が数日続くことも珍しくありません。
大切なのは「熱の高さ」や「日数そのもの」よりも、熱が下がっている時間帯のお子さんの様子です。
- 解熱時に水分がとれ、機嫌が戻り、少し遊べる → 経過を追ってよい
- 解熱しても、ぐったりしている・水分がとれない → 受診のタイミング
なお、いったん解熱してから再び上がる(二峰性の)経過をとることもあります。これ自体は必ずしも悪化を意味しませんが、5日を超えて発熱が続く場合、別の病気が隠れていないかを見直す必要があります。
どんな症状が出ますか?
型によって、いくつかの決まった組み合わせ(症候群)をとります。
のどのかぜ・扁桃炎型(最も多い)
のどの痛み、高熱、鼻水、咳。扁桃に白い膿がつくこともあり、見た目では溶連菌の扁桃炎と区別がつきません。だからこそ、必要に応じて溶連菌の検査を行います。
咽頭結膜熱(プール熱)
のどの痛み・高熱・結膜炎(目の充血)の3つがそろうタイプ。3型が中心です。
→ 詳しくは「咽頭結膜熱(プール熱)」をご覧ください。
流行性角結膜炎(はやり目)
目の症状が主体で、黒目(角膜)に炎症が及ぶことがあるタイプ。8・19・37型が中心で、眼科的な経過観察が必要になります。
→ 詳しくは「流行性角結膜炎(はやり目)」をご覧ください。
胃腸炎型
40型・41型は乳幼児の急性下痢症の5〜10%を占めます。下痢が8〜12日と長引くのが特徴です。
そのほか、中耳炎(特に1歳未満)、細気管支炎、肺炎、男児の出血性膀胱炎(血尿)などを起こすこともあります。
保育園・学校はいつから行けますか?
ここは「アデノウイルスだから何日休む」という決まりはない、というのが答えの出発点です。休む期間は、アデノウイルスによって起きた病気の名前で決まります。
| 診断名 | 出席停止の基準 |
|---|---|
| 咽頭結膜熱(プール熱) | 学校感染症 第2種。主要症状が消退した後2日を経過するまで |
| 流行性角結膜炎(はやり目) | 学校感染症 第3種。医師が感染のおそれがないと認めるまで |
| 上記以外(のどのかぜ型・胃腸炎型など) | 法令上の一律の基準はなく、全身状態で判断(解熱し、食事がとれ、集団生活に戻れる状態か) |
「主要症状が消退した後2日」とは、熱・のどの痛み・目の充血がすべて治まった日を0日目として、その翌日・翌々日を休み、3日目から登園可という数え方です。解熱した日から数えるのではない点にご注意ください。
保育園・幼稚園によっては独自に登園届や意見書を求められることがあります。書式をお持ちであれば受診時にお持ちください。
家族にうつりますか?予防はどうすれば?
うつります。潜伏期間はおよそ2〜14日(多くは5〜7日)です。
感染経路は、飛沫(咳・くしゃみ)、手指を介した接触、目やに、そして便です。症状が治まった後も、便の中に数週間ウイルスが出続けるため、おむつ交換やトイレの後の手洗いは、治ってからもしばらく丁寧に行ってください。
予防で最も重要な、そして最も知られていない点がこれです。
アデノウイルスにアルコール消毒は十分に効きません。
多くのウイルス(インフルエンザやコロナ)は表面が脂の膜(エンベロープ)で覆われていて、アルコールがこの膜を壊すことで不活化されます。アデノウイルスにはこの膜がないため、アルコールが効きにくいのです。
- 手指:石けんと流水による手洗いが基本。アルコールは補助と考える
- 物・環境:次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤の希釈液)、または熱湯・加熱
- タオル・寝具・食器の共用を避ける(家庭内感染の最大の経路です)
アデノウイルスは環境表面で1週間以上生存します。ドアノブ、洗面台、リモコン、おもちゃなど、手が触れる場所の拭き取りが有効です。
なお「プール熱」という名前から夏の病気と思われがちですが、アデノウイルスは一年中発生します。プールに入っていなくても、季節が冬でも、かかるときはかかります。
検査は必要ですか?
必要な場合と、そうでない場合があります。
当院では、のどの所見や目の症状からアデノウイルスが疑われ、かつ検査結果が今後の見通しや登園判断に影響する場合に、迅速抗原検査(綿棒でのどや結膜をこする検査、約10分)を行っています。
ただし、この検査には知っておいていただきたい限界があります。
- 陽性なら、ほぼアデノウイルスと考えてよい(特異度は高い)
- 陰性でも、アデノウイルスを否定できない(感度は必ずしも高くなく、報告により幅があります)
つまり「陰性だったからアデノではない」とは言えません。検査は診断を確定させる道具ではなく、それまでに立てた見立て(検査前確率)を、少し確からしくするための道具です。ですから、症状の経過とのどの所見からアデノウイルスらしいと判断できる場面では、検査をせずに経過をみることもあります。
検査をしても治療が変わるわけではないため、「検査をしないこと」自体が手抜きではない、という点はご理解いただければと思います。
薬はありますか?抗菌薬は効きますか?
アデノウイルスに効く飲み薬(抗ウイルス薬)は、通常の外来診療にはありません。 治療は対症療法——つまり、つらい症状をやわらげながら、自分の免疫がウイルスを排除するのを待つ形になります。
抗菌薬(抗生物質)は効きません。 抗菌薬は細菌を殺す薬で、ウイルスには作用しないためです。飲んでも熱が早く下がることはなく、下痢などの副作用や耐性菌のリスクだけが残ります。ただし、経過の途中で細菌の二次感染(中耳炎や肺炎)を合併したと判断した場合には、その時点で抗菌薬が必要になることがあります。
なお、重症例や免疫が大きく低下している方に用いる抗ウイルス薬(シドフォビルなど)は存在しますが、腎障害などの副作用が強く、入院治療での限られた適応です。
家ではどうケアすればいいですか?
- 水分:のどが痛いと飲めなくなり、脱水につながります。冷たいもの、ゼリー、経口補水液など、飲めるものを少量ずつ頻回に。オレンジジュースなど酸味の強いものはしみることがあります
- 解熱剤:アセトアミノフェンが基本です。
- 市販のかぜ薬・咳止め:12歳未満のお子さんには使用しないでください
- 食事:無理に食べさせなくて構いません。水分が優先です
こんなときは受診してください
- 半日以上、水分がまったくとれない/おしっこが出ない・少ない
- 熱が下がっているときもぐったりしている、反応が鈍い
- 呼吸が速い、肩で息をする、ゼーゼーしている
- 5日を超えて発熱が続く
- 目やにが大量に出る、まぶしがる、目が開けられない、見えにくいと訴える
- けいれんを起こした
- 生後3か月未満で38℃以上の発熱がある
大人もかかりますか?
かかります。多くの大人は過去の感染で免疫を持っているため軽くすみますが、かかっていない型に出会えば、大人でも高熱とのどの痛みが出ます。むしろ、のどの痛みが強く、熱も高く、「こんなにつらいかぜは久しぶり」と言われることが少なくありません。
仕事の復帰については、大人に法的な出勤停止の基準はありません。ただし感染力を考えると、解熱し、のどの痛みが落ち着いてから2日程度をひとつの目安とするのが妥当です。医療・保育・飲食に従事される方、特に目の症状がある方は、より慎重な判断が必要です。
重い経過をとることはありますか?
ほとんどは自然に治る病気ですが、注意が必要な方がいます。
- 新生児・低月齢の乳児:重症化しやすく、慎重な対応が必要です
- 免疫が低下している方(移植後、抗がん治療中など):肺炎や全身に広がる感染を起こすことがあります
また、健康なお子さんでも、まれに肺炎を起こすことがあります。5歳未満で肺炎のために入院した小児のうち、アデノウイルスが検出されるのは15%程度と報告されています。呼吸の様子(速さ、陥没呼吸)は、熱の高さ以上に注意して見ていただきたいサインです。
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よくある質問
Q熱が4日続いています。抗生物質を出してもらえませんか?
アデノウイルスによる発熱は3〜5日続くのが通常の経過で、抗菌薬で短縮することはできません。ただし4日を超えて熱が続く場合、川崎病や細菌の二次感染(中耳炎・肺炎)など**別の病気を考え直す時期**でもあります。薬を足すかどうかではなく、診断を見直すために再受診をおすすめします。
Qプール熱とはやり目は何が違うのですか?
どちらもアデノウイルスによる病気ですが、原因となる型が異なり、プール熱は「のど+熱+目」、はやり目は「目」が主体で角膜に炎症が及ぶことがあります。出席停止の基準も別々に定められています。
Qきょうだいにうつさないためには?
タオルを分ける、手洗いを徹底する、おむつ交換後はしっかりと手洗い(治った後も続ける)——この3つが最も効果的です。アルコール消毒だけに頼らないでください。
Qお風呂に入ってもいいですか?
是非はいってください。ただし、熱が高くぐったりしているときに無理して入る必要はありません。**湯船は最後に入るか、シャワーのみ**とし、タオルは必ず個別に使ってください。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

