RSウイルス感染症
別名: RS感染症、細気管支炎、RSV感染症、Respiratory Syncytial Virus infection
この記事の監修医師
中永 思蘭
日本小児科学会小児科専門医
「RSウイルスと言われたけれど、いつまで続くの?」「保育園はいつから行けるの?」——診断された直後のご家族から、いちばん多くいただく質問です。このページでは、知りたい方が多い順に整理してお答えします。
RSウイルスとは?いつ流行するの?
RSウイルスは、鼻・のど・気管支といった呼吸器に感染するウイルスです。特別に珍しいものではなく、ほとんどの子どもが2歳までに一度は感染します。そして一度かかっても免疫は完全ではなく、再感染を繰り返します。
- 潜伏期間:通常4〜6日(2〜8日の幅があります)
- 感染経路:ウイルスのついた手やもの(ドアノブ、おもちゃなど)を触った手で目や鼻を触ることによる接触感染が最も多く、咳やくしゃみの飛沫でも広がります。ウイルスは手やものの上で数時間生存します
- 家庭内の広がり方:乳児は、先に感染した年上のきょうだいから感染することが多いことが知られています
流行時期は近年変わってきています
日本では2017〜2019年は秋にピークがありましたが、新型コロナ流行後の2021年以降は流行時期が早まり、初夏〜夏にピークが移る年が続きました。直近の2025〜2026年シーズンでは、沖縄県で5〜7月、沖縄県以外では9月に報告数のピークがみられています。
つまり「冬の病気」という以前のイメージは、現在の日本には当てはまりません。季節を問わず、地域の流行状況をふまえて考える必要があります。
熱や咳はいつまで続く?どんな経過をたどるの?
これがいちばん大切なポイントです。RSウイルスは「先に鼻かぜ、あとから咳と呼吸の症状」という順番で進みます。
- はじめの数日:鼻水・鼻づまり、咳、発熱といった、いわゆる「かぜ」の症状
- 数日たってから:ゼーゼー(喘鳴)やゼロゼロといった、下気道(気管支・細気管支)の症状が出てきます
- その後:徐々に回復していきます
「よくなる前に、いったん悪くなる」ことがあります
症状が出はじめて1〜2日目に受診された場合、これから数日は悪化する可能性があるということを、あらかじめお伝えするようにしています。受診したのに悪くなった=診断が間違っていた、ではなく、この病気が本来たどる経過です。
咳は長引きます
咳が消えるまでの期間について、複数の研究をまとめた報告では次のようになっています。
- 咳が治るまでの平均期間:8〜15日
- 13日以内に50%、21日以内に90%の子で咳が消失
- 別の181人の調査では、症状の続いた期間の中央値は12日。約20%は3週間以上、約10%は4週間以上症状が続いた
「2週間たってもまだ咳が残っている」のは、決して珍しいことではありません。ただし、咳が4週間以上続く場合は、慢性の咳として別の視点からの評価が必要になりますので、ご相談ください。
保育園はいつから行ける?証明書は必要?
出席停止の日数は決まっていません
RSウイルス感染症には、学校保健安全法にもとづく出席停止期間の定めがありません。インフルエンザの「解熱後3日」のような日数のルールは存在しない、ということです。
保育所における感染症対策ガイドライン(こども家庭庁)が示す登園の目安は、
呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと
とされています。日数ではなく、状態で判断するという考え方です。
実際の判断の目安
次の状態が揃っていれば、登園を再開できることが多いと考えます。
- 熱が下がっている
- ゼーゼーや強い咳が落ち着いている
- 食事・水分がふだんどおりとれている
- 機嫌がよく、よく眠れている
一方で、咳が少し残っているだけであれば、それだけで登園できないわけではありません。ただし、夜間に咳で目が覚める、ゼーゼーが聞こえるといった状態であれば、まだ体に負担がかかっているサインですので、もう少しお休みされることをおすすめします。
治癒証明書について
RSウイルス感染症について、当院では原則として治癒証明書・登園許可証は必要ありません。園から提出を求められた場合は、まずご相談ください。
こんなときは受診を(危険なサイン)
乳幼児は、大人と違って「苦しい」と言葉で訴えられません。そのため、呼吸の様子と、水分がとれているかどうかを見ることが判断の軸になります。
すぐに受診が必要なサイン
- 呼吸が苦しそう:胸やお腹がペコペコとへこむ(陥没呼吸)、小鼻がピクピク広がる(鼻翼呼吸)、息を吐くときにうなるような音が出る(呻吟)
- 呼吸が速い
- 顔色や唇が悪い・紫色っぽい(チアノーゼ)
- 呼吸が止まる(無呼吸)——特に生後2か月未満の赤ちゃんや早産で生まれた赤ちゃん
- 水分がとれない:母乳・ミルク・飲み物の量がふだんの75%未満、12時間おむつが濡れない
- ぐったりしている:あやしても反応が乏しい、強く起こさないと目を覚まさない
- 新たに熱が出てきた(いったん下がったあとの再発熱を含む)
呼吸数の目安としては、生後6か月未満で毎分60回以上、6〜11か月で55回以上、1歳以上で45回以上が続く場合は、呼吸が速い状態と考えます(服を脱がせて、おなかの動きを1分間数えてみてください)。
特に注意が必要なお子さん
次に当てはまる場合は、早めにご相談ください。
- 生後6か月未満の乳児(入院が必要になる割合が最も高い年齢層で、生後4〜5か月ごろにピークがあります)
- 早産で生まれたお子さん
- 慢性の肺の病気(気管支肺異形成症、嚢胞性線維症など)
- 先天性心疾患
- ダウン症候群
- 免疫が低下している状態
- 持続型の喘息、神経・筋の病気
入院が必要になるのはどんなとき?
次のような場合に入院をおすすめします。
- ぐったりしている、意識がはっきりしない
- 中等度以上の呼吸困難
- 無呼吸がある
- 酸素が必要な低酸素状態が続く
- 水分がとれない/脱水がある
- ご家庭での看護が難しい状況にある
入院となった場合も、合併症のない経過であれば入院期間は2〜3日程度が一般的です。また、医療体制の整った国では、RSウイルス細気管支炎で亡くなるリスクは0.1%未満と報告されています。多くのお子さんは、支える治療(後述)だけで回復していきます。
家でできるケアは?
RSウイルスに「効く薬」はないため、楽に過ごせるように支えることがケアの中心になります。
鼻を通してあげる
鼻づまりは、呼吸の苦しさにも、ミルクが飲めないことにも直結します。鼻吸引は有効なケアです。方法には、スポイト式、口で吸うタイプ、電動タイプがありますが、どれが優れているかについては明確な結論は出ていません(保護者の満足度は電動式のほうが高いというデータはありますが、費用がかかります)。ご家庭で続けやすい方法を選んでいただければ十分です。
水分をこまめに
発熱と呼吸が速いことで水分が失われやすく、一方で鼻づまりや呼吸の苦しさで飲む量は減りがちです。一度にたくさんではなく、少量をこまめにが原則です。おしっこの回数も見ておいてください。
市販の咳止め・鼻炎薬は使わないでください
市販の鼻づまり薬(血管収縮薬)や咳止めは、幼い子どもでは有効性が証明されておらず、かえって害になりうるとされています。自己判断での使用は避けてください。
熱について
苦しそうでなければ、熱そのものを無理に下げる必要はありません。ただし、呼吸が苦しい状態のときの発熱は、呼吸数を増やし、体への負担を大きくするため、解熱剤で下げてあげたほうがよいと考えます。
検査は受けたほうがいい?保育園に言われたときは?
ここは、保護者の方が最も混乱されやすいところです。
検査で治療は変わりません
まず前提として、RSウイルスと分かっても、外来での治療内容は変わりません。特効薬がないためです。検査は、入院が必要かどうかの判断、院内での感染対策、他の病気との区別といった、結果によって次の行動が変わる場面で意味を持ちます。
保険で検査を受けられる方は限られています
日本では、RSウイルス抗原検査が保険適用となるのは、次のいずれかに当てはまる方に限られています。
- 入院中の患者
- 1歳未満の乳児
- パリビズマブ(シナジス)の適用となる患者
なお、2025年12月1日からは、鼻腔ぬぐい液を用いたRSウイルス核酸検出(PCR)検査も保険収載されています。
園から「検査を受けてきて」と言われたら
検査が必要かどうかは、診察したうえで医師が判断します。 板挟みになってお困りの場合は、遠慮なくその旨をお伝えください。こちらから説明の文書をお渡しすることもできます。
検査の精度について
- PCR検査:感度が高く、当院でも確実な確認が必要な場合はこちらを優先します
- 迅速抗原検査:30分以内に結果が出ますが、感度は81%(95%信頼区間 78〜84%)程度で、PCRより低くなります。陰性でもRSウイルスを否定しきれない点が重要です
特に、ニルセビマブなどの抗体製剤を受けた乳児では、迅速抗原検査が偽陰性になりやすいことが知られています。
薬はある?抗生物質は効きますか?
特効薬はありません
RSウイルス感染症の治療は、支持療法(体を支える治療)が基本です。酸素、水分、鼻の吸引といった、回復するまでの体を支える手当てが治療の中心になります。
抗生物質(抗菌薬)は効きません
RSウイルスはウイルスですので、細菌に対する薬である抗菌薬は効きません。中耳炎や肺炎など、細菌の感染が合併していると判断される場合に限って使用します。
気管支拡張薬・ステロイドについて
- 気管支拡張薬(吸入):初めての細気管支炎に対して、ルーチンには使いません。研究では、入院を減らす効果(オッズ比0.75、95%信頼区間0.46〜1.21)も、酸素飽和度・重症度スコア・入院期間を改善する効果も示されていません。ただし、強い呼吸困難や喘鳴がある場合には、効果を確かめる目的で試すことはあります(効果があれば継続、なければ中止します)
- ステロイド:初めての細気管支炎には使いません(救急外来での研究で、入院率は15%対16%と差がありませんでした)。繰り返す喘鳴があり、喘息が疑われる場合には使用を検討します
- 抗体製剤(ニルセビマブなど):これは予防のための薬であり、かかってしまった後の治療には使いません
大人や上の子にもうつる?妊婦さんは?
大人もかかります
RSウイルスは何度も再感染します。再感染では症状が軽くなる傾向があり、大人や年長児では鼻水・咳・のどの症状といった、ふつうのかぜとして経過することがほとんどです。ただし、RSウイルスは他のかぜのウイルスと比べて、副鼻腔や耳に症状が出やすいという特徴があります。
再感染時に下気道の症状(気管支炎、肺炎、喘息の悪化など)が出ることもあり、高齢の方や基礎疾患のある方では注意が必要です。ご高齢のご家族と同居されている場合は、家庭内の感染対策を意識してください。
上の子から下の子へ、が典型的なパターンです
乳児の感染は、先に感染したきょうだいから広がることが多いと報告されています。上のお子さんが「ただの鼻かぜ」に見えても、生後6か月未満の赤ちゃんがいるご家庭では、手洗いと、赤ちゃんとの距離をとる工夫が有効です。
ウイルスはいつまで出ている?
- PCRで検出される期間:平均11日
- ウイルス培養で検出される期間:3〜8日
- ただし幼い乳児では4週間程度続くこともあります
予防する方法はありますか?
ご家庭でできること
- 手洗い(特に、年上のきょうだいがかぜをひいているとき)
- 咳エチケット(ティッシュや袖・肘で口と鼻を覆う、使ったティッシュはすぐ捨てる、そのあと手を洗う)
- たばこの煙を避ける(受動喫煙は重症化のリスク因子です)
- 重症化リスクの高い赤ちゃんは、流行期の集団保育をできれば控える
予防のための注射・ワクチン
現在、日本では次の選択肢があります。
- 母子免疫ワクチン(アブリスボ):妊娠中に接種することで、生まれてくる赤ちゃんに抗体を移行させ、生後早期の重症化を防ぎます
- ニルセビマブ(ベイフォータス):赤ちゃんに直接投与する抗体製剤です。5か月以上効果が続くため、流行期に1回の投与で済みます
- パリビズマブ(シナジス):早産児や心疾患のあるお子さんなどが対象で、流行期に毎月投与します
ニルセビマブの効果として、健康な赤ちゃんを対象とした海外の試験では、入院が0.3%対1.5%(有効率83.2%) に減ったと報告されています。
ただし、日本では対象が限られています。 米国のようにすべての乳児への投与が公費で行われる体制にはなっておらず、2025年シーズンは在胎32週未満の早産児など、高リスクのお子さんに限定して提供されています。健康なお子さんへの予防目的の使用は、添付文書上は可能ですが健康保険の適用外(自費)です。定期接種化については、関連学会から要望が出されている段階です。
対象になるかどうか、費用も含めて個別にご説明しますので、ご相談ください。
RSウイルスにかかると、将来ぜんそくになりますか?
ご質問の多い点です。乳児期に細気管支炎で入院したお子さんは、その後10年間で、繰り返す喘鳴や喘息をもつリスクが3〜4倍高いことが報告されています。
ただし、RSウイルスが喘息を「引き起こす」という因果関係は、まだ確立していません。もともと気道が敏感な体質の子が、乳児期には細気管支炎として、その後は喘息として症状を出している——という可能性も考えられており、遺伝的な素因、環境(たばこの煙など)、免疫の仕組みなど、複数の要因が関わっていると考えられています。
「入院したから将来必ず喘息になる」というものではありません。ただ、その後にゼーゼーを繰り返すようであれば、早めにご相談いただければと思います。
よくある質問
QRSウイルスにかかったら何日休めばいいですか?
決められた日数はありません。呼吸器の症状が落ち着き、全身状態が良ければ登園できます。
QRSウイルスの治癒証明書は必要ですか?
原則として必要ありません。園から求められた場合はご相談ください。
Q迅速検査が陰性なら、RSウイルスではないですか?
迅速抗原検査の感度は81%程度で、陰性でも実際には感染していることがあります。特に抗体製剤投与を受けた乳児では偽陰性が起こりやすくなります。
QRSウイルス感染症後より咳が2週間続いています。おかしいですか?
半数のお子さんでは2週間咳が続きます。9割のお子さんは21日以内に咳が消えます。4週間以上咳が続く場合は評価が必要です。
Q熱が下がりましたが、咳が残っています。登園できますか?
咳が軽く、機嫌・食欲・睡眠に問題がなければ登園可能なことが多いです。夜間に咳で目覚める、ゼーゼーがあるといった場合はお休みください。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

