とびひ(伝染性膿痂疹)
別名: 伝染性膿痂疹、Impetigo、水疱性膿痂疹、痂皮性膿痂疹
この記事の監修医師
中永 思蘭
日本小児科学会小児科専門医
とびひは、細菌が起こす皮膚の感染症です。掻いた手や、水ぶくれ・かさぶたの下のジュクジュク(浸出液)にふれることで、体の別の場所にも、まわりの人にも“飛び火”のように広がります。だからこそ、抗菌薬による治療と同じくらい「覆う・掻かせない・洗う」の3つが大切です。適切に治療すれば、ふつうは数日〜1週間ほどで良くなっていきます。
夏(6月ごろ〜)に、乳幼児から小学生に多い病気です。このページでは、保護者の方が迷いやすい「うつるの?」「保育園は?」「プールは?」といった疑問に、頻度の高いものから順にお答えします。
とびひって、どんな病気? なぜ“飛び火”と呼ぶの?
皮膚についた細菌が水ぶくれやかさぶたをつくり、それを掻いた手を介して次々にうつっていくため、火の粉が飛び散るように広がることから「とびひ(飛び火)」と呼ばれます。
原因の多くは、皮膚にいる黄色ブドウ球菌という細菌です。一部では溶連菌(溶血性連鎖球菌)が関わることもあります。これらの菌は、あせも・虫さされ・湿疹・すり傷などを掻き壊した小さな傷口から入り込み、増えていきます。感染してから症状が出るまでは、だいたい2〜5日です。
「飛び火」という名前が、この病気の対処法をそのまま表しています。中身(浸出液)に菌がいて、掻いた手がそれを運ぶ——だから、患部を覆い、掻かせないようにし、こまめに手を洗うことが、薬と並んで治療の柱になります。
どんな症状が出るの?(水ぶくれタイプ・かさぶたタイプ)
とびひには、水ぶくれができる「水疱性」と、厚いかさぶたができる「痂皮性(かひせい)」の2つのタイプがあります。子どもに多いのは水疱性です。
| 水疱性膿痂疹(多い) | 痂皮性膿痂疹 | |
|---|---|---|
| 主な菌 | 黄色ブドウ球菌 | 溶連菌が関わることがある |
| 見た目 | かゆみのある水ぶくれ→破れてジュクジュク・ただれ | 厚い、はちみつ色〜黄褐色のかさぶた |
| 多い時期・年齢 | 夏、乳幼児〜小児 | 季節を問わない。大人にもみられる |
| 全身症状 | ふつうは目立たない | 発熱・のどの痛み・リンパ節の腫れを伴うことがある |
| 出やすい場所 | 鼻の下・口のまわり、手足など汗をかきやすい所 | どこにでも |
水疱性の水ぶくれは、菌の出す毒素が皮膚の表面のつながりを一時的にはがすためにできます。破れると中身が広がり、飛び火のもとになります。
あせも・湿疹・水いぼ・ヘルペスとどう違うの?
とびひは「短期間で数が増える」「ジュクジュクする」「はちみつ色のかさぶたができる」のが手がかりです。ただし見分けが難しいことも多く、迷ったら受診をおすすめします。
- あせも:汗のたまりやすい所にできる小さなブツブツ。人にはうつりません。ただし掻き壊すと、そこがとびひの入口になります。
- 湿疹・アトピー性皮膚炎:境界がはっきりしない赤み・かゆみ。これ自体はうつりませんが、掻いた傷にとびひが二次的に重なることがよくあります(このときはとびひの治療も必要です)。
- 水いぼ:つやのある半球状のいぼで、中央がへこんでいます。ウイルスが原因で、とびひとは別の病気です。
- ヘルペス(単純ヘルペス):小さな水ぶくれが集まってでき、ピリピリ・チクチクした痛みを伴います。口のまわりに繰り返すことが多いです。
「湿疹だと思ってステロイドだけ塗っていたら広がった」というときは、とびひが隠れていることがあります。
人にうつるの? 家族や兄弟は大丈夫?
うつります。掻いた手や、水ぶくれ・かさぶたの浸出液にふれることで、同じ子の別の場所にも、一緒に暮らす家族にもうつります。とくに兄弟間や、タオル・衣類の共有で広がりやすいです。
飛び火を止めるための家庭内のポイントは次のとおりです。
- タオル・衣類・寝具を共有しない
- お風呂は患部を清潔にしてから。兄弟と一緒に湯船に入るのは避け、感染している子は最後に入るか、シャワーで済ませる
- 患部をガーゼなどで覆い、ジュクジュクが外に出ないようにする
- 触れたら手を洗う。子どもの爪は短く切っておく
何科に行けばいい? 市販薬で治せる?
皮膚科でも小児科でも受診できます。市販の塗り薬で自己判断せず、早めの受診をおすすめします。
市販の抗菌軟膏(フラジオマイシンなどを含むもの)は、とびひの菌に効きが不十分なことがあり、かえってかぶれ(接触皮膚炎)の原因になることもあります。とびひは広がりやすいので、適切な塗り薬と「覆う・掻かせない・洗う」を早めに始めるほうが、結果的に早く・軽く済みます。
当院は内科・小児科として、お子さんのとびひの診察・治療を行っています。掻き壊しの背景にある湿疹やアトピーのケアも含めて相談いただけます。
どんな治療をするの?(塗り薬・飲み薬・かゆみ止め・消毒)
基本は抗菌薬の塗り薬です。範囲が広い・全身症状があるときは飲み薬を追加します。かゆみが強ければ、掻き壊し=飛び火を防ぐためにかゆみ止めを併用します。
- 塗り薬(外用抗菌薬):フシジン酸、ナジフロキサシン、オゼノキサシンなどを使います。
- 飲み薬(内服抗菌薬):範囲が広い・数が多い・発熱などがあるときに追加します。ブドウ球菌が主体の水疱性にはセフェム系、溶連菌が関わる痂皮性にはペニシリン系を選ぶなど、タイプに応じて調整します。
- かゆみ止め(抗ヒスタミン薬):かゆくて掻いてしまうと広がるため、かゆみを抑えることも治療の一部です。
- 消毒:現在は基本的に行いません。石けんでやさしく洗って清潔に保つほうが、皮膚を傷めず効果的だと考えられています。
- ジュクジュクが多いときは亜鉛華軟膏を重ねたり、土台に湿疹があるときはステロイド外用を併用したりすることもあります。
適切に治療すれば、多くはおおむね4〜5日で改善に向かいます。良くなったように見えても、処方された分は自己判断でやめず最後まで使い切ることが、再発を防ぐコツです。
家でのケアはどうすればいい?
「洗って清潔にする・患部を覆う・掻かせない」が3本柱です。
- 洗う:入浴時に石けんをよく泡立て、患部もやさしく洗って清潔に保ちます(洗ってはいけない、ということはありません)。ゴシゴシこすらないでください。
- 覆う:塗り薬のあと、ジュクジュクが外に出ないようガーゼなどで覆います。これが飛び火をいちばん防ぎます。
- 掻かせない:爪を短く切り、かゆみが強ければ受診時に相談を。鼻の穴をいじる癖も、菌を運ぶもとになります。
保育園・幼稚園・学校はいつから行ける? 出席停止になる?
とびひは、インフルエンザのように一律の出席停止期間が決まっている病気ではありません。治療を始め、患部をガーゼなどで覆って浸出液が外に出ない状態であれば、登園・登校できます。
これは日本小児皮膚科学会などの統一見解にもとづくものです(学校保健安全法では「その他の感染症=第三種」に位置づけられます)。ただし、
- 病変が広範囲に及ぶ場合
- 発熱などの全身症状がある場合
は、休ませたほうがよいとされています。園や学校によって独自の取り決めがあることもあるので、登園・登校の前に先生に確認し、必要なら医師にご相談ください。
プールはいつから入れる?
すっかり治るまで、プールや水遊びはお休みしてください。
プールの水を介してうつることはありませんが、肌と肌が接触したり、患部がふやけて悪化したりするため、日本小児皮膚科学会・日本臨床皮膚科医会の統一見解でも、治るまでは禁止とされています。再開の時期は、医師や園・学校の先生に相談して決めましょう。
何日くらいで治る? 跡は残る?
適切に治療すればおおむね4〜5日で改善し、1〜2週間ほどで治っていくことが多いです。多くの場合、跡は残りません。
ただし、深いかさぶたをつくるタイプ(膿瘍化・えぐれた潰瘍になるもの)では、一時的に色素沈着が残ったり、まれに瘢痕になったりすることがあります。治りが遅い・広がるときは、薬が合っていないこともあるので、途中でも受診してください。
大人もなるの?
なります。とくにかさぶたタイプ(痂皮性)は、季節を問わず大人にもみられます。
アトピー性皮膚炎や手あれなど、皮膚のバリアが弱っているところに起こりやすくなります。ひげ剃り後や、湿疹を掻いた部位などがきっかけになることもあります。
こんなときは早めに受診を
次のようなサインがあるときは、様子を見ずに受診してください。
- 2〜3日治療しても良くならない、または広がっている
- 発熱がある、水ぶくれが急に全身へ広がる(重症化のサイン)
- 溶連菌が関わるとびひのあと、1〜3週間して、血尿(コーラ色の尿)・尿量の減少・まぶたや足のむくみが出た
最後のものは、まれですが「溶連菌感染後の腎炎」の可能性があり、注意が必要です。皮膚のとびひが治ったあとに起こることがあるため、頭の片隅に置いておいてください。
とびひを繰り返さない・広げないために
掻き壊しをつくらないこと、そして肌を清潔で健やかに保つことが予防になります。
- 手をこまめに洗い、爪を短く切る
- 汗はこまめに拭く。あせも・虫さされ・湿疹は掻き壊す前に早めにケアする
- 肌の乾燥を防ぎ、スキンケアで整えておく
- 鼻の穴をいじらない(鼻の中は菌のすみか)
- 家族間でタオル・衣類を共有しない
とびひは、こじれる前に治療を始めれば、こわい病気ではありません。「これってとびひかな?」と思ったら、掻き広がる前に早めにご相談ください。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

