おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)
別名: おむつかぶれ、diaper dermatitis、diaper rash、おむつ皮膚炎、紙おむつ皮膚炎
この記事の監修医師
中永 思蘭
日本小児科学会小児科専門医
おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)は、おむつで覆われた部分にできる、赤ちゃんに最も多い皮膚トラブルです。生後9〜12か月ごろがピークで、おむつを使うお子さんの4人に1人ほどが一度は経験するといわれます。多くは家庭のケアで数日で良くなりますが、「治らない」「しわの奥が真っ赤」といった場合は別の原因が隠れていることもあります。
このページでは、いま困っている対処から、原因・見分け方・受診の目安までを順にまとめます。
まず何をすればいい?(おむつかぶれの基本ケア)
いちばん効果的なのは、尿や便が肌に触れている時間を減らすことです。 薬を塗る前に、まずこの土台を整えます。
- こまめにおむつを替える ── 目安は2〜3時間ごと、うんちのあとはすぐに。
- やさしく洗う/拭く ── ぬるま湯とやわらかい布で。ゴシゴシこすらず、押さえるように。乾かすときも押さえ拭きで。
- しっかり乾かしてから保護剤(ワセリンなど)を塗る(次の項目)。
- ときどきおむつを外して空気にさらす ── 1日数回、数分でも肌を乾いた状態に。
洗いすぎ・拭きすぎは逆効果です。強い刺激はかえって治りを遅らせます。「汚れをやさしく落とす」くらいで十分です。
何を塗ればいい? ワセリン? 軟膏?
皮膚を尿・便から守る「保護剤(バリア)」を、おむつ交換のたびに塗るのが基本です。 代表は 白色ワセリン と 亜鉛華軟膏(酸化亜鉛)。
- 軟膏・ペーストを選ぶ ── クリームやローションは水分が多く保護力が弱いうえ、香料や防腐剤で刺激になることがあります。
- 毎回、やや厚めに ── 荒れた部分をしっかり覆うように。おむつにくっつくときは、上から薄くワセリンを重ねると防げます。
- 毎回きれいに拭き取らなくてよい ── 落としたいときはオリーブオイルやベビーオイルを含ませた綿でやさしく。
- 香料・防腐剤・添加物入りの製品は避ける ── かえって刺激になります。成分表示を確認しましょう。
ベビーパウダーは使わないでください。 誤って吸い込むと肺に入る危険があり、おむつかぶれの治療としてもすすめられません。コーンスターチも同様です。
なぜおむつかぶれになるの?(原因)
最も多いのは、尿と便による「刺激性接触皮膚炎」です。 次のような流れで起こります。
- おむつの中で 湿気がこもる → 肌がふやける(浸軟する)
- ふやけた肌が おむつとの摩擦 で傷つき、バリア機能が落ちる
- 便の中の細菌が尿を分解して 皮膚のpHがアルカリ性に傾く
- pHが上がると便の中の酵素(たんぱく分解酵素・脂肪分解酵素)が活性化し、肌を直接刺激して炎症を起こす
つまり「おしっこ」と「うんち」が一緒になったときに最も肌に負担がかかります。だからこそ、排便後すぐの交換がとても大切です。
なりやすい状況
- おむつ交換の間隔が長い
- 下痢が続いている(便が多く肌に触れる)
- 抗生物質を飲んだあと(下痢やカンジダが増えやすくなる)
- ミルク栄養(母乳より便のpHが高めのため。母乳のお子さんは比較的少なめ)
これはおむつかぶれ? カンジダとの見分け方
「でっぱった部分に出て、しわの奥は赤くない」ならおむつかぶれ(刺激性)、「しわの奥が真っ赤で周りにポツポツ」ならカンジダを疑います。 出る場所が正反対なのが最大の手がかりです。
| 刺激性おむつかぶれ | カンジダ性皮膚炎 | |
|---|---|---|
| 出る場所 | おしり・下腹部・陰部・太ももの付け根など でっぱり(凸面)。しわの奥は避ける | しわの奥・股のくびれに出る |
| 見た目 | 赤み〜皮むけ・ただれ | 真っ赤で、周りに小さな赤い発疹や膿のポツポツ(衛星病変) |
| 経過 | ケアで2〜3日で軽快 | 3日以上治らない・悪化する |
| 手がかり | ─ | 口の中の白いカス(鵞口瘡)、下痢や抗生剤のあとに多い |
医師が診察で見ているのは、まさにこの「場所」です。 しわを避けているか、しわの奥まで及んでいるか。ここが刺激性かカンジダかを見分ける決め手になり、治療(保護剤だけでよいか、抗真菌薬が必要か)が変わります。
あせも・アトピーとの違い
- あせも ── 汗をかきやすい首・背中などにも同時に出やすい。
- アトピー性皮膚炎 ── おむつの中は湿って潤うため、実は出にくい場所。おむつ内に湿疹があり、体の他の部位(顔・ひじ・ひざの裏など)にもかゆい湿疹があれば、そちらを疑います。
カンジダ性おむつ皮膚炎について
おむつかぶれが3日以上治らないときは、カンジダ(カビの一種)が二次的に感染していることがよくあります。 別の病気というより、「治りきらないおむつかぶれの続き」として起こるのが典型です。
なぜ起こる?
カンジダはもともと腸の中や皮膚に少量いる常在菌です。おむつの中で肌のバリアが壊れ、湿ってpHが上がった環境になると、そこで増えて炎症を起こします。次のような状況で起こりやすくなります。
- おむつかぶれを3日以上放置・改善しないまま経過している
- 下痢が続いている
- 抗生物質を飲んだあと(腸内の細菌バランスが変わるため)
- 口の中に白いカス(鵞口瘡)がある
どんな見た目?
- 股のしわ・くびれの奥が真っ赤(刺激性がしわを避けるのと正反対)
- 赤みの境界のすぐ外側に、小さな赤い発疹や膿のポツポツが散らばる(衛星病変)
- 膿のポツポツが破れると、ふちに薄い皮がめくれたような跡が残る
- 表面に細かい粉をふいたような皮むけ
診断は、多くの場合この見た目と場所で判断できます。はっきりしないときは、皮膚を少しこすって顕微鏡で真菌を確認することもあります。
治療
抗真菌薬(ミコナゾールなど)の塗り薬を使います。 1日2〜3回、保護剤(ワセリン・亜鉛華軟膏)の下に塗り、症状が消えるまで続けます。多くは長くても2週間以内で改善します。
あわせて、こまめなおむつ交換・やさしい洗浄・保護剤という基本のケアは続けてください。土台のケアなしに薬だけでは治りにくくなります。
注意:カンジダかどうかで薬が変わります。 自己判断でステロイドだけを塗り続けると、カンジダの場合は改善しない、あるいは悪化することがあります。また、市販の「ステロイド+抗真菌薬」の配合クリームは、赤ちゃんのおむつ部位にはステロイドの強さが不適切なため使わないでください。おむつの中は密封された状態で薬が吸収されやすく、強いステロイドは全身への影響が問題になります。
口の中の白いカス(鵞口瘡)があるとき
おむつのカンジダと同時に、口の中に白い苔のようなものが付いていることがあります。これも同じカンジダによるもので、こちらは飲み薬・塗り薬で別に治療します。哺乳瓶の乳首やおしゃぶりを介して繰り返すことがあるため、煮沸消毒もあわせて行います。気づいたら受診時に伝えてください。
市販薬やステロイドは使っていい?
基本は保護剤(ワセリン・亜鉛華軟膏)で十分です。ステロイドや抗真菌薬は、自己判断ではなく受診のうえで使いましょう。
- 抗真菌薬 ── カンジダと診断されたときに使います。市販で自己判断せず、医師に相談を。保護剤の下に塗ることが多いです。
- ステロイド軟膏 ── 炎症が強いときに、医師の指示で 弱いタイプを短期間(1週間以内) 薄く使うことがあります。おむつの中は密封状態で薬が吸収されやすいため、強いステロイドは使いません。市販のステロイド+抗真菌薬の配合剤も、赤ちゃんの肌には強すぎることがあり、おむつ部位には向きません。
- 市販の抗菌薬入り軟膏(ネオマイシン等を含むもの)は避けてください。 かぶれ(アレルギー)を起こしやすい成分です。
どうやって予防する?
「こまめな交換」と「やさしい洗浄」、そして「毎回の保護剤」。 この3つが予防の柱です。
- おむつはこまめにチェックし、濡れたら替える。うんちのあとはすぐ替える。
- 洗うときはぬるま湯とやわらかい布で、やさしく。おしりふきを使うなら 無香料・ノンアルコール のものを。肌が荒れたり傷ができたら、おしりふきはいったん中止します。
- おむつかぶれのあいだは、吸収力の高い紙おむつがすすめられます。
- おむつ交換のたびに保護剤を塗って、肌と尿・便のあいだにバリアを作ります。
病院を受診する目安は? 小児科と皮膚科どっち?
次のようなときは、家庭ケアだけにせず受診してください。
- 数日ケアしても良くならない、または悪化する
- 水ぶくれ・膿を持ったただれができた
- 38℃以上の発熱、または血便がある
- おしっこ・うんちの回数や様子が急に変わった(下痢・便秘など)
- 機嫌が悪い・母乳やミルクを飲まない・眠れないなど、いつもと様子が違う
小児科・皮膚科どちらでも診てもらえますが、赤ちゃんの場合は発熱や全身の状態、下痢の有無なども合わせて診られる 小児科 が相談しやすいことも多いです。当院でもお気軽にご相談ください。
繰り返す・なかなか治らないとき
標準的なケアで治らないおむつかぶれは、別の原因が隠れていないかを確認します。 皮膚炎の見た目が典型的でない場合や、治療に反応しない場合には、カンジダの検査(皮膚をこすって顕微鏡で見る)や、まれに他の皮膚疾患・全身の病気の可能性を調べることがあります。
たとえば、カンジダのおむつかぶれを何度も繰り返す場合には、ごくまれに糖尿病や免疫の問題が背景にあることもあります。過度に心配する必要はありませんが、「いつもと違って治りにくい」と感じたら、自己判断で長く様子を見ず、一度受診してください。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。

