小児のせき
別名: 慢性咳嗽、長引く咳、小児の慢性咳、小児咳嗽、prolonged cough in children
この記事の監修医師
中永 思蘭
日本小児科学会小児科専門医
当院での対応
- 小児科での診察
- 必要に応じた検査(呼気NO検査など)
- 処方
- 長引く咳の経過観察・管理
- 発熱を伴う場合の発熱外来でのご対応
- 専門医療機関への紹介
お子さんのせきが何日も続くと、「肺炎では」「ぜんそくでは」と心配になりますし、夜のせきで親子とも眠れない、というご相談もよくいただきます。せきは小児科を受診される理由のなかでもっとも多いものの一つです。
ここでは、長引くせきをどう考えればよいか、ご家庭で見ておいていただきたい「危険なサイン」、そして受診の目安について、できるだけ実際の診療に沿って整理します。
「長引くせき(慢性のせき)」とは
医学的には、4週間以上続くせきを「慢性のせき(慢性咳嗽)」と呼びます。
この4週間という区切りには理由があります。子どものふつうのかぜ(ウイルス感染)によるせきは、多くがこのくらいの期間で自然に治っていきます。逆に4週間を超えても続く場合は、「自然に治るせき」なのか、「治療や検査が必要な病気が隠れているせき」なのかを一度立ち止まって考える、というのが診療上の目安になっています。
なお、15歳以上のお子さんについては、原因や考え方が大人とほぼ同じになるため、大人の基準で診ていくことが多くなります。
まず知っておいていただきたいこと:多くのせきは自然に治ります
長引くせきというと重い病気を想像しがちですが、子どもの場合、よくある原因の多くは適切に対応できるものです。なかでも頻度の高いもののひとつが「かぜ(ウイルス感染)のあとに残るせき」で、これは自然に治っていくタイプです。
ウイルス感染は、せきを起こす神経の反応を一時的に過敏にすることがわかっており、ウイルス自体が体から消えたあとも、せきだけがしばらく尾を引くことがあります。このタイプのせきは、
- 乾いたせき(痰がからまない)
- ほかに気になる症状がない
- だんだん軽くなっていく
という特徴があり、特別な薬を使わなくても、2〜4週間ほどかけて自然に落ち着いていくのがふつうです。お子さんがふだんどおり元気で、食欲も体重も問題なければ、あわてて強い薬を使うより、経過を見ながら(数週間後に再評価する)対応が基本になります。
子どもは1年に4〜8回ほどかぜをひくのが平均的で、年長のきょうだいがいたり、保育園・幼稚園に通っていると、もっと多くなることも珍しくありません。「かぜが治りきらないうちに次のかぜをもらう」ことで、結果的に長く続いているように見えるお子さんもたくさんいます。
受診をおすすめする「せきのサイン」
一方で、次のようなサインがあるときは、隠れた病気を見つけるために評価が必要です。これらは「特異的なせきのサイン」と呼ばれ、診断の手がかりになります。当てはまるものがあれば、早めにご相談ください。
① 痰がからむ「湿ったせき」が長く続く
これはとくに大事なサインです。4週間以上続く湿った(痰がからむ)せきは、それ自体が「正常ではない」と考えます。湿ったせきは気道に分泌物がたまっていること、多くの場合は気道の感染を意味するため、「子どもだから様子見でよい」と片づけてはいけないサインです。
② ゼーゼー・ヒューヒューする、息苦しそう
ぜんそくをはじめとする気道の病気のサインです。保護者の方が「ゼーゼー」に気づきにくいこともあるため、診察ではこちらからも確認します。
③ むせ込んだあとに急に始まった
食べ物や小さなおもちゃなどが気道に入った(誤嚥・異物)可能性があります。数週間前のエピソードでも関係していることがあります。とくに5歳未満のお子さんでは、はっきりしたむせ込みの記憶がなくても、異物の可能性を念頭に置きます。
④ 生まれてすぐ・新生児期から続いている
生まれつきの気道や心臓の異常、免疫の問題などが背景にあることがあります。
⑤ 体重が増えない・哺乳や食事がうまくいかない
慢性的な病気が隠れているサインです。
⑥ 肺炎を繰り返している
同じ場所で繰り返す場合は気道の構造的な問題、いろいろな場所で繰り返す場合は全身的な病気(嚢胞性線維症、線毛機能不全、免疫の問題など)を考えます。
⑦ そのほか
血の混じった痰(血痰)、指先が丸く太くなる(ばち指)、胸の変形、運動時の強い息切れ、心臓・神経・免疫の病気をお持ちの場合なども、追加の評価が必要です。
子どもの長引くせきで多い原因
子どもの長引くせきでとくに多い原因として、次の3つがよく知られています。
① 感染後のせき(自然に治るタイプ)
乾いたせきで、ほかにサインがなく、徐々に治っていきます。特別な治療をしなくても落ち着いていくことがほとんどです。
百日せきのあとに、せきが数週間続くこともあります。予防接種をきちんと受けていても起こりうるため、長引くせきでは年齢にかかわらず可能性として考えます。
② ぜんそく(喘息)
子どものあらゆる年齢で多い原因です。せきは乾いたせきが典型的で、ふつうはゼーゼーをともないます。ただし、せきだけが目立つタイプもあるため、
- 運動・冷たい空気・夜間・アレルゲンで悪化するか
- 湿疹やアレルギー性鼻炎などのアレルギー体質があるか
- 家族にぜんそくやアレルギーの人がいるか
などを確認し、必要に応じて呼吸機能検査や、ぜんそくの薬を一定期間試して反応をみる、という進め方をします。薬が効いたからといってすぐにぜんそくと確定するわけではなく(自然に治っただけのこともあるため)、診断が固まるまでは漫然と薬を続けないことも大切です。
③ 遷延性細菌性気管支炎(PBB)
聞き慣れない病名かもしれませんが、幼児(とくに5歳未満)の長引く湿ったせきの代表的な原因です。気道に細菌の感染が長引いている状態で、
- 4週間以上続く湿ったせき
- ほかに目立った症状がない
- 適切な抗菌薬で治る
といった特徴があります。きちんと治療すれば良くなりますが、放置すると気管支拡張症という後戻りしにくい病気につながることがあるため、見つけて治療することが重要です。治療には一定期間(通常2週間以上)の抗菌薬が必要で、せきが残る場合は期間を延ばすこともあります。市販のかぜ薬や、なんとなくの抗菌薬では治りません。
大人と子どもで違うところ
大人の長引くせきでは、胃酸の逆流(逆流性食道炎・GERD)や後鼻漏(鼻水がのどに垂れる)がよくある原因として挙げられます。しかし子どもでは、これらが長引くせきの主な原因になることは多くありません。
ですので、お子さんに胃酸逆流や鼻の症状が見られない場合に、念のためと逆流の薬を長く使うことは、原則おすすめしません。「大人のせき」と「子どものせき」は別物として、子ども向けの考え方で診ていく必要があります。
市販のせき止めについて
意外に思われるかもしれませんが、市販のせき止め・去痰薬は、子どもの長引くせきには推奨されていません。効果を示す確かな証拠がなく、とくに小さなお子さんでは安全性の懸念があるためです。
また、コデインやジヒドロコデインなどを含む薬は、子どもには使わないでください。せきは抑えるかもしれませんが、重い副作用の危険があります。
「せきを止める」より、「せきの原因に対処する」「せきを悪くする要因を減らす」のが基本の考え方です。
ご家庭でできること
- たばこの煙を避ける:受動喫煙は呼吸器の感染や長引くせきの大きな要因です。ご家族に喫煙される方がいる場合は、お子さんの前(車内も含む)では吸わないこと、できれば禁煙を強くおすすめします。
- インターネットの情報には誤った家庭での対処法も含まれます。判断に迷うときはご相談ください。
「眠っているときには出ないせき」について
学童期のお子さんで、
- 日中や診察室では目立つのに、眠っている間はぴたっと止まる
- 気をそらすと止まる
といった特徴のせきが見られることがあります。これはチック様咳嗽(かつては「習慣性咳嗽」と呼ばれていたタイプ)や、心理的な背景のあるせきのことがあります。
ここで大切なのは、これはお子さんがわざと出しているわけでも、「悪い癖」やしつけの問題でもないという点です。チックは本人の意思だけでは止めにくい、半ば不随意の現象です。「癖だからやめなさい」と叱っても改善しませんし、かえってお子さんを追いつめてしまいます。安心できる説明や、温かい水を少しずつ飲むといった行動的な対応で軽くなることが多いタイプで、必要に応じて専門的なサポートも行います。ほかのチック症状(まばたきや首振りなど)をともなう場合は、別の評価が必要になることもあります。いずれもほかの原因を除外したうえでの診断になりますので、自己判断せずご相談ください。
受診の目安
次のようなときは、お早めに高浜台内科小児科クリニックへご相談ください。
- せきが4週間以上続いている
- 痰のからむ湿ったせきが続いている
- ゼーゼーする、息苦しそう、顔色が悪い
- むせ込んだあとに急に始まった
- 体重が増えない、元気がない、食事や哺乳がうまくいかない
- 肺炎を繰り返している
- 血の混じった痰が出る
- お子さんやご家族のせきへの不安が大きい
長引くせきの多くは自然に治るものですが、なかには見つけて治療すべき病気が隠れていることもあります。「湿ったせきが長く続く」「元気がない・体重が増えない」といったサインがあるときは、ためらわずにご相談ください。気になることがあれば、せきの音をスマートフォンで録音して受診時にお持ちいただくと、診察の助けになります。
よくある質問
Q子どもの長引く咳の相談はできますか?
小児科でご相談いただけます。必要に応じて検査を行い、状態に応じた管理を行います。
Q発熱を伴う場合はどうすればよいですか?
発熱・かぜ症状がある場合は、感染対策のためLINEまたはお電話(0463-74-6927)から発熱外来をご予約のうえお越しください。
Q受診に予約は必要ですか?
発熱症状のない通常の小児科受診の予約方法は、予約案内のページでご確認いただけます。
この記事について
この記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。 症状がある場合は、医療機関を受診してください。


